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16. 気ままな冒険者生活がすきなんだ

 隣街から帰ってきてから数日、いくつかクエストもこなし懐も温かくなっていた。うまい料理と酒にありつこうと、一人、酒場に入って料理と酒を注文した。


 セレナはあまり酒を好まないのか、食事時に酒をのまないため、それに合わせて飲まないようにしていた。

 彼女は気にしないで好きにしていいというが、同じテーブルだというのに一人で飲んでいるのがどうにも気まずかった。


 夕刻過ぎの時間帯であり、他にも仕事帰りの男たちの姿や、同じ冒険者仲間の姿もあった。賑やかな声が酒場を満たしている。

 

「よう、ライル。聞いたぜ、すんげー美人とパーティー組んでるとか」


 エールの入ったジョッキを片手に絡んできたのは、ジョニーだった。コイツとの付き合いもながく、かれこれ10年以上である。


「ああ、彼女はたしかにすごいな。なにせワイバーンを一撃で切り伏せたからな」


「まじか!? 見た目じゃわかんねえもんだなぁ。この前街でみかけたときは清楚な美人って感じだったのにな。そんなことよりも、どうなんだよ、えぇ。ギルド内でも噂になってるぜ。ういた話がひとつもない堅物のライルに春が来たってな!」


 こいつもう酔ってやがるな。赤くなった目元にいやらしい笑みを浮かべている。


「アホか。まだ会ってほとんどたってないんだぞ。それに彼女とはただのパーティメンバーでしかない」


「もったいねえな、オレだったら速攻で口説きにいくぞ!」


「……奥さんにちくるぞ」


「やめて、マジで」


 拝んでくるジョニーを半眼で見つめながら、運ばれてきた酒を一気にあおる。はぁ……体に酒精が染み渡る……。


「おまえ、いっちゃえばいいじゃん。チャンスだろ。早くしないと誰かにとられちまうぞ」


「オレは一人がいいんだよ。気ままな冒険者暮らしが好きなんだ」


「おまえもいろいろこじらせてんなぁ。もったいない」


 ため息をつきながら料理の皿に手を伸ばすジョニー、結局そのまま二人で酒盛りが始まってしまった。


 酔ったジョニーの口から出るのは、家庭での愚痴が多かった。だけど、それを語るときの表情は楽しげなもので、適当に相槌をうっておいた。

 正直、こいつが結婚生活を普通に送っているということが意外だった。初めて会ったころはバカなことばっかりやってるやつだったが、結婚してからは受けるクエストも安全性を優先している。

 軽薄な態度は変わらずだが、家庭を守るための大黒柱としての自覚はあるらしい。


 

 酔いつぶれたジョニーを家に届けたのは夜遅く。

 明日起きたら、やつの奥さんにイヤミでも言われると思うと少しだけ溜飲が下がるのだった。


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