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17. セレナの子供なんじゃないか

 ある日の冒険者ギルド、そこにはいつもどおり騒がしい雰囲気に満ちていた。

 そんな中に、勢いよく扉が開かれて入ってきたのは、小柄な少女だった。

 旅装のまま来たと思われる姿のまま、少女は受付カウンターへと大またで近づく。ブーツがたてる音がカツカツと周囲に響いていた。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ」


 受付担当であるリリーが笑顔をうかべながら応対するが、少女は無遠慮にカウンターに片手をのせて威圧的するように身を乗り出す。


「セレナ・バートランド」


「はい?」


 少女はただ一言だけを口にし、リリーは困惑しながら少女をみる。口を真一文字に引き結び、固い表情をしながら告げた。


「あの人がここにいるのはわかっているのよ」




 今日もセレナと共にクエストを無事に終わらせ、報酬を受け取ろうとギルド会館へとむかう。


 だが、入った瞬間、妙な雰囲気を感じた。


 何があったのかと目を走らせると、広いロビーの中央で一人の少女をなだめるリリーの姿が見えた。

 透き通るような白い肌に銀色の髪をもち、どことなくセレナと似た風貌の少女だった。小柄な体と丸い顔がどことなく小動物を思わせる愛らしさを持っている。

 しかし、今はは眉間にシワをよせて、一方的にリリーにたいしてなにごとかをまくし立てていた。


「……おい、何があったんだよ。トラブルか」


 手近な冒険者に小声で話しかけると、同じように声をひそめながら話し出す。


「それがよぉ、あのお嬢ちゃんがギルド会館に入ってきてから、ずっとあの調子でリリーが相手してるんだ」


「なんだよそれ、いつからここは子守をする場所になったんだ」


「ちがうんだよ。あのお嬢ちゃんがセレナの名前をだして、早く会わせろって言い出してよ。見た目も似てるし、もしかして子供なんじゃねえのかって話してたんだ」


「こどもだぁ?」


 セレナはたしか今年で30歳、あの少女の風貌からして10代前半ぐらいだろうか? 年齢的にはおかしくなさそうだった。


「どうしたんだ、ライル?」


 そこに渦中の人物であるセレナが声を上げると、一斉に視線が集まった。

 そして、少女もまたセレナを見ていた。


「セレナ……」


「ん? オルニスじゃないか、どうしてここに?」


「いたあああああ!」


 少女は全速力でセレナに突進し、腰に抱きついた。

 背負ったリュックや、装備の重量をあわせて結構な衝撃になったであろうが、セレナは大地に根を生やした大樹のようにしっかりと受け止める。


「もう、逃がさないわよ」


 言葉だけを聞くと再開シーンを喜んでいるように見える。周囲にいた人間たちも一件落着とばかりに散っていく。


 しかし、そばにいたオレからは見えていた。セレナの背中にまわされた両手に、締め付けるようにギリギリと力がこめられているのを。


「セレナ、この子は?」


「ああ、オルニスといって、ノースガンドでの冒険者仲間だよ」


 セレナはまったく苦しげなそぶりを見せることもなく涼しい顔をしている。やがて疲れたのかオルニスは手を離すと、ひたいを流れる汗をぬぐう。


「……あいかわらずマイペースなやつね。まあいいわ、ほら帰るわよ」


「どこにだ?」


「ノースガンドよ! むこうの支部のギルマスからあんたを連れ戻して来いって言われてるの!」


「うーん……。ライル、すまないが、クエストの報告を頼んでもいいか? 話が長くなりそうだし、ここだと皆の迷惑になる」


「それは、かまわんが」


「事情は後で説明するよ。それではな」


「待ちなさい、だれがついていくって……。ちょっと、ひっぱらないで! まって、自分で歩けるから!」


 セレナに腕を引っ張られながらオルニスはギルド会館を後にしたのであった。


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