宣言
拙作をお読みいただきありがとうございます。
ただ、これドンドン学園物から離れてるような気がする。
ジャンル、恋愛に変えようかな?
「私、優様のお嫁さんになります。」
「は?」
まっすぐに優を見ながら麗華が再度口にする。
聞き間違いではないようだ。
「・・・あの、一之瀬麗華さん?」
「明日もこの時間に訪問いたします。晩御飯の用意はしない様にしてください。」
そう言ってメモを書き始める。
「・・・どうしても都合が悪いときはこちらにご連絡ください。」
渡されたメモには携帯電話の番号とメールアドレスが記載されていた。
「おい、待てコラ! 個人情報をこうも簡単に渡すな!!」
「優様なら安心できます。」
「そう言うこっちゃなくてな?」
戸惑う優を他所に麗華は電話をかける。
「瀬川さん、例のギルドの出張所まで車をまわしてください。」
これだけ言うと通話を切り、携帯電話を鞄にしまうと重箱を片付け始める。
「出張所まででいいのでお見送りして頂けますか?」
「・・・はい。」
氷結の女王の有無を言わさぬ物言いに優はうなずくしかできなかった。
出張所までの道程で優と麗華は会話らしい会話はしなかった。
出来なかったともいう。
出張所にある駐車場の一之瀬家の車まで送ると麗華が振り返り礼を言う。
「ここまでお見送りいただきありがとうございました。」
「・・・どういたしまして・・・。」
「明日は頑張ってサバの味噌煮を作ってみようと思いますので楽しみにしていてください。」
「・・・無理、しなくていいんだぞ?」
「楽しみにしていてください。」
「いや、だから・・・。」
「楽しみにしていてください。」
「・・・。」
「楽しみにしていてください。」
「・・・はい。」
「では、また明日。」
「・・・はい。」
こうして麗華は車に乗り去って行った。
自宅への帰路で優は大いに悩んだ。
(お嫁さんになるって一之瀬家が許すわきゃねぇだろうが・・・。)
だが、実際はそのような事は無い。
昨今の社会事情から優秀な狩人をお抱えにするのは立派なステータスになりつつある。
しかもSクラスとなれば条件次第ではあるが首相など国家の代表者に単独面会が許される。
Sクラスが特別扱いされるのはここに起因する。
その為優秀な狩人を、特にSクラスの狩人を血族に向かい入れて家格をあげようとする者もいる位なのだ。
確かに優が考える様に狩人は言ってしまえば傭兵。
場合によっては非合法な武器をいくつも所有する。
優もハンドガンやマシンガン、アサルトライフルや刀剣類、色々とヤバいものを持っている。
倫理的にあまりよろしくないヤクザ商売と言えるだろう。
警察や軍にも対悪魔戦闘員がいるのだから尚更その傾向がある。
それでも即応力と融通と言う点でどうしてもギルドの狩人が優先される。
例え金がかかる事になっても場数と言う経験を踏んだ実績は消えないのだ。
つらつらとそんな事まで考えて自分の家に入って優は違和感を覚える。
何も変わってない。
にも拘らず手狭なはずの自宅がやけに広く感じる。
(さっきまでここに二人っきりでいたんだよなぁ・・・。)
久しく連日で囲んだことが無かった台所のテーブルを優は指でそっと撫でた。
一方結婚宣言をした一之瀬麗華嬢は自宅へ帰るとすぐに自室に籠ってしまった。
(・・・とんでもない事言っちゃった・・・。)
いつもの自分なら決してこのような事などしない。
必ず考えてから口にする。
それなのにあの優しい魔神の寂しそうな、悲しそうな、そんな顔を見た瞬間胸が締め付けられた。
気付いた時には言葉が出ていた。
(どうしよう!? どうしよう!? どうしよう!? 明日どんな顔してあったらいいの!?)
ベットで悶絶しているとドアをノックする音で我を取り戻す。
「麗華御嬢様? よろしいでしょうか?」
声は麗華に家庭料理を教えている使用人のふみの者であった。
「・・・今、開けます。」
そこには困った顔のふみとニヤニヤ笑う兄である卓也とにこやかに笑う姉の侑希が
揃っていた。
「さぁ、初めてのお料理を食べて貰った感想を言いなさい。」
承諾もなしに麗華の自室にズカズカ入ってきたニヤニヤ笑う卓也と侑希を思いっ切り殴りたい気分になった。
だがそこは良家の御嬢様。
堪えるという術を身に付けている。
「・・・美味しいと言われました。」
言われた時の情景が脳裏に浮かび自然と頬が緩む。
その表情を見て姉、侑希が言い募る。
「それで! それでその後どうしたの? 何かこう、進展があるんでしょ!」
野次馬根性丸出しである。
だが、この際と思い切って相談してみる事にした。
「優様に将来、結婚を前提とした交際を申し込みたいと思っているのですが今後どのようにしたらいいのでしょう?」
・・・・・・・・・。
部屋は静寂に支配されるがすぐに破られる。
「何!? そんな面白い事になってるの!?」
「ちょ!? そこまで進展しているの!? 面白すぎるわよ! 詳しく教えなさい愚妹!!」
一之瀬家で家族会議が開かれた。
「すぐちゃんの方から相談があるなんて珍しいわね?」
一之瀬麗華に嫁宣言をされてた翌日早朝、自分の正体を知る数少ない知人の中でもさらに少ない女性の友人として存在する警察官、沢渡冴子に相談することにした。
昨日起こった事を余すことなく喋った。
冴子の目が爛々と輝き始めた。
口元がにやけてる。
(相談する相手・・・ひょっとして間違えたか?)
「そうか! そうか! ついにすぐちゃんにも春が来たか!」
「いや、あのな、話聞いてたか? 俺はどうすればお断りできるか相談に乗って欲しいと言ったんだぞ?」
途端に冴子の目が半眼になる。
「女の子にここまでさせといてそれは無いんじゃないかなぁ、すぐちゃん?」
「良家の御嬢様が俺みたいなヤクザ家業に片足突っ込んだ奴と結婚できるわきゃねぇだろ!!」
「良家とか御嬢様とかヤクザ稼業とか色々と細かい事を考えすぎ! すぐちゃんはどうしたいの! 麗華お嬢さんが自宅に来てくれて嬉しかった!? 迷惑だった!? どっち!」
(・・・嬉しかったよ! えぇ! 嬉しかったですよ!)
「麗華お嬢さんが台所使って晩御飯の準備する姿を思い浮かべてごらんなさい! 嬉しい? 迷惑?」
(綺麗な指を絆創膏だらけにして準備してくれたんだ! 嬉しいよ!)
「・・・ホント、男ってどうしてこうも不器用で馬鹿なのかしら?」
「・・・・・・相談に乗っていただきありがとうございました。」
結局優は答えを出すことが出来ないまま学校へと向かった。
放課後優は一枚のメモを持て余していた。
言わずと知れた麗華嬢の連絡先である。
(電話一本、それだけで済むはず。これで縁が切れて・・・そんでどうなる?)
今日は補習は無い。
先生にだって都合がある。
後は家に帰るだけ。
一之瀬麗華が待っているだろう。
想像が出来ない。
今まで通りの生活に戻るような気がしない。
優だって男子である。
同世代の美人にあそこまで言い寄られたら嬉しいいに決まっている。
(結局は良家とか一般市民とか関係ないんだよなぁ・・・。)
電話一本入れて絶縁する勇気を優は持ていなかった。
一之瀬麗華は宣言通り天川家の前にいた。
重箱も持っている。
昨日より絆創膏の数が多いような気がする。
それだけで優は拒絶の言葉が言えなくなる。
「・・・どうぞ・・・。」
家に上げる優であった。
「御馳走様。」
「お粗末様です。」
食後に茶を淹れる麗華を見ながらなんとか口を開く。
「美味しかったんだが・・・。」
「? 何か気になる事でも?」
「何回も言ってるんだが、一之瀬家なんて良家の御令嬢がこんな所に入り浸るな。狩人なんて謳っちゃいるが結局はヤクザ稼業に片足突っ込んだ仕事だ。一之瀬家の醜聞になる。今後ここに立ち入るな。」
勇気を持って優はやっと言う。
だが、それに間髪おかずに麗華は返答する。
「嫌です。」
ポカーン。
そんな擬音が聞こえてきそうなほど優は口を開けて呆けていた。
「少なくとも兄と姉は私達の結婚に賛成派です。」
「!?」
「私は是が非でも優様の元に嫁ぎに来ます。」
この後このやり取りは一か月続く。
誤字脱字ありましたらご報告ください。
ご都合主義万歳でやっておりますのでもしよろしければアドバイス等いただけると嬉しいです。




