52 突然の……
卒業式の前々日、放課後に用があり職員室へ行った。
しかし用事の他につい話し込んでしまって、帰りが遅くなってしまった。
(こんなことならカバンを持っていけばよかったな)
教室へ戻ると窓際に男子がいて外を見ていた。私が教室へ入るとその物音で振り返ったのは、陸上部の高井君だった。
「吉山さん今から帰り? 俺も途中まで一緒にいいかな?」
思いがけない言葉だったけど、断る理由はないので一緒に帰る事にした。
高井君は自転車通学だが、今は私に合わせて自転車を押して歩いてくれる。色々な話題を教室にいる時と同じように面白おかしく話してくれた。
しかし元々通学路がそれほど被ってないので、すぐに分れ道に来てしまった。
角には小さな公民館があるが、今の時間は誰も使っていないようで静かだ。
「ここから先30分、農道をひたすら走るんだ」
「大声で歌っても大丈夫そうだね」
「よく歌うよ。まぁ、辻村みたいに上手くないけど」
そう言って笑ってから高木君は周りを見回した。
「もうちょっとだけ話をしていい?」
「うん、いいよ」
「じゃ、あの辺で」
公民館の敷地には植木があってそこを指差す。
高木君は何度も咳払いをしてから口を開いた。
「俺、吉山さんが好きなんだ。高校は別々だし、今更なんだけど……」
「…………」
私はかなり困惑した顔をしているのだろう。すでに高井君は苦笑している。
「私、その……」
嫌いではないが、好きかと聞かれると……違う。
しばらく二人の間に気まずい空気が流れた。
「ゴメン」
先に口を開いたのは高井君だった。
「俺はスッキリしたけど、吉山さんは困ったよなぁ」
「……ごめんなさい」
「やだな、吉山さんが謝らないでよ」
高井君はいつもの笑顔に戻っていた。
「ありがとう。遅いのに話しに付き合ってくれて」
自転車に乗り、振り返って言う。
「ううん」
「じゃあ、また明日」
「気をつけてね」
高井君は軽く手を上げると、勢い良く自転車を走らせていった。
夕飯を終え、早々に自分の部屋へ戻った。すでに手元にある卒業アルバムをめくり、高井君の写真を探した。
よく日焼けした肌に白い歯がよく目立ち、爽やかな笑顔で写っている。
(告白された……)
改めて思い返し、顔が赤くなる。
高井君は面白くてクラスの盛り上げ役だった。修学旅行で一緒のグループになった時、本当に楽しかった。
(あ……)
そういえばあの時、清水寺の恋占いで豪快に転んだ。レイ君はそれを見て『突っ込んでいって自滅するタイプ』と言ったけど、まさか私を……。でも笑えなかった。
高井君が嫌いでないなら、一緒に居ればその内好きになっただろうか? でもそんな気持ちで付き合ったら、それは失礼だ。
それにしても、自分は何故もっとちゃんとした返事が出来なかったのだろう……申し訳なく思った。
次の日、教室で高井君と会っても普段と変わらず挨拶出来た。長く顔を合わせていたら不自然な部分はあったかも知れないけど。
明日は卒業式だ。




