表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
第三章 中学生編
PR
79/88

50 予餞会

予餞会当日の早朝に行なったリハーサルでも完璧だった。


「今日は緊張してない?」


「してるけど、それ以上に歌うのが楽しみなんだ」


カズ君に聞くと、明るい声で返事が返ってきた。



STIMULUSは予選会のトリを飾る。


本番は滞りなく進みメンバーが舞台に現れると、今回も黄色い歓声があがった。


いつもどおりレイ君のカウントで演奏が始まった。


普段のカズ君から想像出来ないパワフルな歌声だ。他のみんなも負けずに力強い演奏で、そのエネルギーがステージから激しく投げ掛けられる。


観客席もそれに応え、とても盛り上がった。


3曲目、オリジナル曲の演奏を前にレイ君はドラムから離れてピアノに向い、カズ君はギターを構えた。観客はざわついたけどレイ君のピアノですぐに静かになった。


奏でられたのはサビのアレンジで、本来のテンポよりややゆったりしている。美しいメロディはまるでクラッシックの名曲のようで、周り中が息を飲んで聴き入った。


最後の一音が消えると、カズ君が静かにアカペラで歌い始める。全く音程を外す事なく堂々と歌い上げた。


そして歌の終わりにかぶせるようにしてレイ君のシンバルが鳴り、それに続いて激しい演奏が始まった。静から動への変化が今までの曲以上にエネルギーを感じる。


今回のアレンジで一番大変だったのはカズ君だ。アカペラに加えてギターも弾くのだ。あくまでメインは岡田君だけど、ツインギターになったために音により厚みがでる。


すでにサビの歌詞は観客も覚えてしまい、一緒になって口ずさんだ。


その時カズ君は微かに笑ったように見えた。


他のみんなもステージを楽しんでいるようだ。


しかし残念ながら素敵な曲も終わりがやってきた。エンディングを迎え、勢いよく演奏は突き進んだ。


「ありがとうっ!」


曲の最後にカズ君が叫ぶ。


メンバー全員で舞台の縁に揃って、お辞儀をした。拍手は鳴り響き、自然とアンコールの声が上がった。


レイ君は満足そうに頷き、それぞれの位置に戻るように指示を出した。



アンコールは一転して穏やかな曲だ。


カズ君の声が胸にせまる。本当に最後だと思うと、みんなが一生懸命に練習する姿が思い出されて胸が一杯になった。


丁度その時、カズ君と目があった……ような気がした。


喧騒の中、一瞬だけすべての音が消える。


小さい頃からカズ君の色々な表情を見てきた。


穏やかな笑顔。勉強や練習中の真剣な顔。


でも今ステージに立つカズ君はそのどんな表情でもない。歌う事に迷いがなく、自信を持った顔だ。凛々しくてカッコいい。


呆然と見つめていたが、すぐ我に返って演奏を聴く。


やがて曲は心地よい余韻を残して終わった。


同時にワーッという大歓声と、拍手や口笛。


それらはいつまでも鳴り止まず、再びアンコールの声もあがった。さすがにそれに応える事は出来なかったが、ラストステージは大成功だ。



『STIMULUS』もこの中学の伝説になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ