43 文化祭(4)
「レイ君が言ったような?」
「そう。それはギターの時より何倍も強くて……」
カズ君はギターも上手く弾ける。
でも今日のようにボーカルの方が良い声を活かせてるし、カズ君自身も水を得た魚のようだった。レイ君はこの事を見越していたのだろうか。
「僕は高校生になったらバンド活動に力を入れるって言ったよね」
「うん、聞いたよ」
「その先もずっと続けたいなって、考えてた」
「歌手になるって事?」
「たった1回のステージでバカみたいだろうけど」
そう言ってカズ君は小さく笑ってため息をついた。
「そんな事ない」
私は立ち止まり大きな声で言った。驚いた様に振り向くカズ君の真正面に進み、じっと目を見た。
「ずっと応援するよ」
カズ君はいい加減な気持ちではない。それなら私も真剣に返事をしなければ。
「私に出来る事があれば手伝うよ。ライブに行ったりレコードを買ったり……あとは沢山の人に宣伝するとか、かな?」
本当はどんな事がカズ君の手助けになるのか全然分からなかったけど、思いつく事をあげてみた。
カズ君は初めこそ目を丸くしていたが、私から視線を逸らさず聞いていてくれた。そして聞き終わるとニッコリ笑った。
「ありがとう。美紀ちゃんが応援してくれるなら心強いよ」
「そ、そう?」
改めて言われると恥ずかしい。
「でも美紀ちゃんは、絶対賛成してくれると思った」
「まあね。小さい頃から勧めてるのに、これで反対したら酷いよ」
私は笑いながら頷く。
「でも取り敢えず高校に受かってからだな」
カズ君は自分で自嘲気味に言ってから肩をすくめた。
「だから他の人には内緒にね。お願い」
そう言うとペコリと頭を下げる。
「カズ君がそう言うなら。でも、レイ君には?」
「まだ言ってない」
「レイ君も喜ぶよ」
「そうだといいけど……」
言葉を濁し、ここで初めて私から目を逸らした。
カズ君は少し無言になった後、「遅くなるから」と私を促して歩き始めた。
「今の僕にはレイ君の居ない音楽は考えられない」
歩いている途中、ポツリとカズ君が言った。
「でもレイ君はピアニストを目指してるから、僕の考えてる将来の事は話せないんだ」
「…………」
そう話すカズ君の横顔はどこか寂しそうだ。
小さい頃レイ君はカズ君が歌う時にピアノを演奏する約束をしてくれた。あの時はまだバンドを組んでいなかったけど、ピアニストを目指している事に変わりはない。
さすがに『そんな事ない』とは言えなかった。
暫らくの間カズ君とレイ君の周りは騒がしかったが、二人は浮ついたりせずいつもどおりの態度だったので、あっという間に落ち着いてしまった。
文化祭が終わり、いよいよ受験態勢に入る。
カズ君は成績が上がってきたとはいえ油断は出来ないので、今まで以上に一生懸命勉強していた。もちろん私も負けずに机に向かう。
時々レイ君の家で3人一緒に勉強をした。
でも時々音楽を聴いたり軽く演奏をしたり……息抜きもしていた。




