42 文化祭(3)
文化祭の後、レイ君の家で『打ち上げ』があった。もちろん飲み物はジュースだけど。
「最高だったね!」
私はまだ身体の中に感動が残っていた。
「当然」
レイ君は軽く言うが、顔はものすごく嬉しそうだ。
「二人共ソロ良かったよ」
「ありがとうございます」
下級生コンビは飲んでいるのがサイダーなのに、顔を赤くして喜んでいる。
「半泣きで練習したかいがあったな」
レイ君がからかう。
「半泣きじゃないっス」
「本気で泣きました!」
明るく言う二人だけど目は真剣だった。
「レイ君、女子だけじゃなくて男子も泣かすんだ」
「人聞きが悪いな。女の子は泣かさない」
今度は私がレイ君をからかうと、すまし顔で答えた。
「またまた~」
レイ君はそれを聞いて笑う二人の後ろから間に入り、首に腕をまわして締め付けた。
「男には容赦ないよ?」
「うわっ」
「ほ、本気で絞めてる~」
レイ君は珍しくテンションが高い。みんなもまだ興奮が覚めていないようだ。
その騒がしい中でカズ君ニコニコしながらも静かに座っていた。
「カズ君、お疲れ様」
私は隣に移動してカズ君に声を掛けた。
「あはは……ステージ後の方が疲れたなぁ」
「大変だったね」
教室に戻ると二人の周りには人が集まり、大騒ぎになったのだ。
「練習で聴くよりもっと良かったよ。カズ君の歌、感動した」
「ホント?」
カズ君は、はにかみながら頭をかいた。
「やっぱりカズ君は歌手になれるんじゃない?」
「そうかな……」
私の言葉にカズ君は手を止め、そう呟く。いつもの笑みが消え何か考え込んでいた。
「お邪魔しました」
「気をつけて帰ってね」
おばあちゃんは夕飯まで用意してくれたので、すっかり遅くなってしまった。
私とカズ君はいつものように一緒に帰る。
「レイ君、ものすごく上機嫌だったね」
私は打ち上げを思い出して笑いながら言った。レイ君は最後までハイテンションだった。
「嬉しかったんじゃないかな。思った以上の出来で」
カズ君はあれから暫らくうわの空だったけど、今はいつものカズ君だ。
「一昨年はあれほどじゃなかったよ」
BRAVEも成功したのにそこまでテンションは高くなかった。
「BRAVEは安住さんや兄ちゃんがいたから、遠慮してたのかな」
「遠慮ねぇ。一応先輩をたててたんだ」
「STIMULUSはレイ君が一から作ったんだし、余計に嬉しかったんだよ」
リーダーの苦労もあったから喜びも大きかった、という訳か。
「カズ君は大人しかったね。だから余計にレイ君が目立ったのかも」
「少し考え事しちゃって……申し訳なかったな」
周りに気を使うカズ君が場を忘れるほど何を考えていたのか。
口には出さなかったが、私の沈黙と顔には疑問が表れていたのだろう。少しの間夜道には二人の足音だけが響いていたけど、カズ君から切り出した。
「僕はステージでの緊張と達成感をもう一度、いや何度でも感じたいと思ったんだ」
カズ君は真剣な眼差しだった。




