41 文化祭(2)
今年も文化祭2日目の午後が有志グループの発表だ。
STIMULUSが舞台に上がると、本物のバンドみたいに観客席から女子生徒の声があがった。
それぞれが所定の位置につく。カズ君がメンバーを見渡すと、みんなが頷いた。
レイ君がカウントをとる。
岡田君のギターが。坂井君のベースが。レイ君のドラムが……一斉に観客席へ放たれた。
前奏から勢いがいい。
カズ君はその音を聴いて満足そうに深く頷き、自分が歌う直前「イクゾッ!」と叫んだ。
カズ君を知ってる人なら驚いただろう。野球の試合以外で大声を出す事はないからだ。
実は私もこのシャウトにビックリした。今まで練習でも全く言った事はない。
歌い出せばもっと驚く人が多いはずだ。男子にしては高い声なのに細い感じは全くせず、むしろよく通って力強い。
早朝のリハーサルでは完全ではなかったけど、今は全く問題無かった。
観客はリズムに合わせて身体を動かし始め、徐々に盛り上がっていく。
2曲目は更にスピードが速く、体育館がいつもにはない熱気に包まれる。
その熱が冷める事無くコピー曲の演奏は終わった。後はオリジナル曲を残すのみだ。
岡田君のギターがイントロを奏で始めた。
繊細なメロディながらもスピード感がある。次々にベースとドラムも重なっていく。
今までは有名な曲だったのに今度は全く初めての曲だ。観客の中でも怪訝そうな顔をする人が多かった。
背中にみんなの音を受けながら佇んでいたカズ君が深く息を吸い込む。
そして高く伸びやかな声が体育館に響き渡った。
声が裏返らないでギリギリ出せる高い音程。
それは激しくも切ない曲調をより際立たせた。
『知らぬ音』が『曲』に変わった瞬間だ。
観客からため息のような声が聞こえる。一度落ち着いた周りの空気を、たった数小節の歌で元の温度に戻してしまった。
だけどさっきと少し違うのは熱気を感じるのにどこか静かなのだ。身体もごく自然と最小限に動いている感じだった。
日本語の歌詞というのもあるけど、観客は曲を聴き入ってしまっているのだ。
コピー曲がどれだけ上手に歌えようとも、この曲には敵わないと思う。カズ君が歌う事を前提に作られたのだから。
レイ君はカズ君の歌だけではなくメンバー全員の見せ場も考えていた。
みんな練習中の苦労を感じさせない鮮やかな演奏だった。
曲は終盤に差し掛かり、転調しながらサビを何度か繰り返す。練習でも聴いているのに、胸に迫るものがある。
終わってしまうのがとても惜しい……ずっと聴いていたかった。
ラストのサビ。
曲調は明るく変わり、同じメロディでも初めとは全然印象が違う。
カズ君はしっかりと客席を見据えて最後まで歌いきった。
そのまま演奏は畳み掛けるようにエンディングへ。
演奏が終わった瞬間、静かな熱気が爆発した。
拍手や歓声、悲鳴などが体育館を揺らす。
その中……力を出し切ったメンバーは流れる汗をそのままに、晴れやかな表情で立ち尽くしていた。




