17 ついに、新バンド始動
今日レイ君の家にバンドメンバーが集まっている。
もう名前は決まっただろうか?
音合わせは上手くいっただろうか?
練習後の後片付けを終えると、私は急ぎつつも静かに着替えていた。そこに大賀さんが来て「デート?」と耳打ちする。私も「そんな訳無いって」と小声で返す。
そのうち大賀さんはカバンから雑誌を取り出し、占いの特集を読み始めた。あっという間に部員は大賀さんに集まり大騒ぎになる。
そのお陰で、私はさりげなく部室を出る事が出来た。本当に大賀さんには助けられてばっかりだ。校門を過ぎると自然に走り出していた。
別に私が元BRAVEの集まりに顔を出す事がいけない訳ではない。だけど最近部員でレイ君に告白をしたけど断られた人がいるので、それを考えると少し気を遣ったのだ。
その子とレイ君は同じ委員で一緒に行動をする事が多く、普段も仲良くお喋りをしていので上手くいくと思っていたのに。
急いだけど一足遅くすでに解散していて、レイ君が一人でピアノを弾いていた。
「あぁ、残念」
「テストが近いから早く終わった」
「どうだった?」
「よかったよ。録音したテープはカズ君が持っていったから聴くといい」
「うん、そうする。あとバンドの名前はどうなったの?」
「名前ね……」
レイ君は言葉を濁した。
「なに勿体つけてるのよ」
「別に」
ピアノのふちを指でコツコツ叩きながら少し首を傾げて微笑む。レイ君のファンは騒ぎそうだけど、私には通用しない。
「教えて」
「交換条件」
私が「何故そんな事を」と言う前に、レイ君は畳み掛けるように続けた。
「今年もチョコをくれる?」
「バレンタインの?」
私は全く予想もしていない言葉に思わず声が大きくなった。
「そう」
確かに元々は義理としてでもタカ兄ちゃんにあげたくて始めたのだけど、去年とうとう告白は諦めたうえにタカ兄ちゃん自身も遠くへ行ってしまった。
だから今年からはチョコを配る必要はない。しかし急に止めるのはあまりにも勝手だと思い、義理チョコを配るのは続けようと決めていたのだ。
それにしてもレイ君はあれだけ貰えるのだから、私に催促する必要なんてないはず。
「私があげなくてもたくさん貰えるじゃない」
「まあね」
レイ君は平然と言ってのけた。
「今年は25個以上が目標」
「あきれた。私は頭数なのね」
「だって……」
一瞬言葉を切り、目を細める。
「どうせ100%義理でしょ」
私は一瞬ドキッとした。ダシにした後ろめたい気持ちがそうさせたのか、レイ君の言葉と表情は何かを含んだように見えたのだ。
「もちろん義理よ、義理」
「ほら、万が一義理といいつつ本命だったら悪いし」
「…………」
わざと言っているのだろうか?
「ご心配なく。純粋に義理ですから」
「だったら頭数でもいいじゃないか」
「う~ん、そうね」
「じゃあそういう事でよろしくね」
「ハイハイ」
なんとなく釈然としないけど、元からあげるつもりだったので一応了承した。




