15 カズ君の歌声(2)
しばらくするとレイ君がはなれに戻ってきた。
「二人とも来週の日曜日に来れるそうだ」
「分かった、僕もその日は部活がないから丁度良いや。美紀ちゃんはどう?」
カズ君はレイ君にそう返事をすると、私に聞いてきた。
「ごめんね。その日は午後からバスケの練習があるの」
県大会は近い。丸一日休みは今日くらいで、また毎日練習が続く。
「そうなんだ」
私の答えにカズ君は少し声を落とす。
だけど練習は変更される事なく決定した。いくら私が手伝う事があるからといっても、演奏するメンバーの予定が最優先なのだから仕方がなかった。
「間に合うか分からないけど、練習が終わったら行くよ」
私は気を取り直して言った。
「そう?」
「せっかくBRAVEが再開するのに、立ち会えないなんて残念だもん」
ギターだけでもこれだけ良かったのだから、これがバンドならばもっと聴き応えがあるはずだ。やはり出来ればその日に聴きたかった。
「正確に言うと『BRAVE再開』じゃないけどね」
スティックをクルクルと回しながらレイ君は言った。
「どういう事?」
「2人メンバーが違うし、ボーカルも変わった。新バンドとしてやりたいんだ」
「確かににそうだけど……」
「だから名前も変える」
回していたスティックを止め、レイ君はキッパリと宣言した。
「名前を変えちゃうの? BRAVEじゃなくて?」
私はビックリしてしまった。
「心機一転ってところ」
レイ君の言う事は分からなくもないけど、あっさりと変えてしまうのは少し寂しい。
「カズ君は、いいの?」
「レイ君が変えたいなら、そうしてもいいよ」
それを聞いた私は、カズ君は優しいから反対なんてしないだろうなぁ…と心の中で呟くと小さくため息をついた。
「大体BRAVEのままだと前のイメージが強すぎるだろ。例えばタカ兄ちゃんのボーカルとか……」
レイ君がそういった時に、カズ君の表情が微妙に硬くなったような気がした。
(ああ、そうか……)
いくら穏やかなカズ君でもタカ兄ちゃんと比べられるのは嫌だろう。実際に野球チームでも「負けたくない」と言い切っていた位だ。
私は寂しい気持ちが完全に消えた訳じゃないけど理由を聞いて納得した。
「それで新しい名前は決めたの?」
「それも来週さ。カズ君の復帰が完全に決まったら名前も決めよう、と思ってたから」
どうやら色々と大きく動くのは来週のようだ。
改めて立ち会えない事が本当にとても残念だったけど、決まった瞬間ではなくてもバンド名はその日のうちに聞くことが出来る。それを楽しみに当日はバスケの練習に励もう。
「バスケが早く終わればいいなぁ」
「もちろん来てくれた方が嬉しいけど無理に急がないでね。危ないから」
またいつもの穏やかな笑顔に戻ったカズ君がそう言ってくれた。
その後もカズ君とレイ君は何曲も合わせていた。
曲数を重ねていくと更に良くなって、本当にバンドが楽しみだった。




