13 それぞれの努力
「まだ完成じゃないから」
「え~残念。レイ君が作る曲って、すごく興味があるのにな」
私がそう言うと、しばらく口を固く結んでいたレイ君が楽譜を数枚取り出した。
「ピアノ用なら……あるけど」
「ピアノ用? それ、聴きたい!」
そんな物も作っていたなんて初耳だ。
レイ君はイスに座りなおして深呼吸をする。そして鍵盤に両手を置くと、おもむろに弾き始めた。
レイ君の手から紡ぎだされる曲は、静かで品格を感じるけどどこか華やかで……まるでガラス細工のように美しい。そんな曲だった。
「すごく綺麗な曲。素敵」
曲が終わり、私は素直に絶賛した。
「あ、ありがとう」
照れているようでぶっきらぼうな返事だ。
「もう一回聴かせてくれる?」
録音して家でも聴きたい位だけど、それより生演奏で心に残したかったのだ。
「いいよ」
レイ君は応じてくれた。そして再び曲が奏でられる。
心地よい演奏は全く感動が色褪せる事なく、心にしみこんでいった。
カズ君が猛勉強を始めたのも夏休みだった。
ほぼ毎日部活があっても、夜遅くまで部屋の電気は消える事がない。お兄ちゃんに勉強を教わりに家へ来た事もあり、試験前の勉強とは様子が違う。
今までも成績は決して悪くないが、私やレイ君とは100番ほど差が開いていた。
「一緒に西高へ行けたらバンド活動もしやすいと思って」
それが猛勉強の理由だった。
西高はお兄ちゃんが通っている高校で、私とレイ君も進学を希望している。公立の進学校ながら部活動も盛んだし、その割には校風も自由だと聞いていた。
「野球は?」
「もちろん続けるよ。でもプロは……これは僕の力量のせい」
最後は苦笑まじりだったけど、カズ君はそう答えた。
「…………」
小さい頃からの夢は叶わないのかな。それについては何と返せばいいか分からなかったけど、3人で同じ高校へ行けるのは嬉しい。
「それじゃあ一緒に西高へ行こうね」
「うん!」
私がそう言うと、カズ君は大きく頷いた。
今まで練習を積んできたギターの岡田君とベースの坂井君の演奏技術は、レイ君が見込んだとおりかなり上達している。
しかし2学期が始まってもカズ君の喉の調子は良くならなかった。そのために文化祭には間に合いそうになく、残念ながら参加を見送った。
「仕方がない。ここで焦っては意味が無いから」
周りからどんなに出場を求められても、カズ君の綺麗で高い声をできるだけ残したいレイ君は辛抱強く回復を待ち続けていた。
バスケ部では、3年生が引退した秋に大賀さんがキャプテンで私が副キャプテン……という懐かしい体制になった。
小学校の時と比べれば色々と難しい事もあるけど、それでも部活を辞めたくはならず一生懸命練習に励んだ。
新体制初の大会は年明けにある地区大会の新人戦。4位までに入ると県大会に出場できるという大事な大会だ。
年末年始の数日以外は練習が続き、その結果1位という最高の成績を収める事が出来た。




