12 2年生~新バンド結成、が~
始業式、私はクラス分けの掲示板を見て驚いた。今度は3人とも同じA組だったのだ。
1年前はガッカリしていたけど、今年はまるっきり反対の気分だった。
「楽譜を渡してから3日後に演奏を聴いて判断する」
その日の午後、はなれでレイ君からオーディションの方法を聞いた。
「3日?早くない?」
「初見じゃないだけ親切だろ。場合によっては初心者でもメンバーに考えてる」
初心者といってもレベルは落としたくないだろうから、単純なようでも条件はかなり厳しいだろう。レイ君のおメガネに適うような人はいるのだろうか。
「それと自分の楽器を持っている人」
「カズ君は?」
カズ君はまだレイ君のエレキギターを借りている。
「ボーカル」
「え!」
カズ君は先に聞いていたらしく声は上げなかったものの、困惑しているようだ。
私はカズ君の歌が好きだから良いと思うが、「兄ちゃんみたいに歌えない」と肝心の本人は自信なさげだ。
「声質が違うんだから当たり前だろ。モノマネなんて望んでない」
「でも僕らがやるからには完璧なコピーを期待されるよ」
「いや、コピーだけじゃなくてオリジナルもやる」
「オリジナル?!」
私とカズ君の驚く声が重なる。
「曲はカズ君の声を前提に僕が作からカズ君じゃないと困るんだ」
レイ君の口調は淡々としていたけど真剣だった。その気迫にカズ君の不安げな表情は変わらないけど、それ以上は何も言わなかった。
「大丈夫。カズ君の歌は素敵だから」
私は慰めではなく心からそう思って言った。
「そうかなぁ」
カズ君は自信がなさそうにただ力なく笑っていた。
『BRAVEが新メンバーを募集している』
その話はあっという間に広まり、実際に応募してきた人は何人もいた。だけど私が心配したとおり、なかなかメンバーが決まらなかった。
「僕は良くってもレイ君がね……要求するものが高いし、技術的に良くても気が合わない人は断っているよ」
あとでカズ君がこっそり教えてくれた。
そしてもう一つ問題が起きた。カズ君が誕生日を過ぎた頃から声変わりしてきたのだ。
音楽の先生に聞いたところ、無理して歌わない方が良いとの事だった。
「落ち着くまで待つしかないね」
レイ君はカズ君をボーカルから変えるつもりはないようだ。
「でも野球部で声を使うのがな」
「それは仕方ないよ」
「うん」
さすがのレイ君でも野球を辞めさせる事は出来ない。
しばらくバンド活動は保留になった。
その後メンバーが決まったのは、もう夏休みだった。
2人とも1年生でほぼ初心者だという。
「荒いけどいい腕だと思う。練習する時間はある」
「まだ当分カズ君の声待ちだもんね」
バンドの話しをするレイ君の声が久しぶりに明るい。私はその時点で二人に会っていなかったけど、上手く行くといいなと思った。
「曲作りはどう?」
私は前から気になっていた別の件について尋ねた。
「まあまあ、かな」
「また~」
レイ君が作る曲を早く聴いてみたいのに、一向に出来る気配がない。




