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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
第三章 中学生編
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11 予餞会~タカ兄ちゃんの卒業~

「運がよければどこか合格してるだろう」


そう言っていた安住さんの受験も終わり、BRAVEは予餞会へ向けて練習を開始した。


今回演奏するのは3曲。今から新曲を仕上げるのははちょっと厳しかったので、文化祭でも演奏した曲も入っている。


タカ兄ちゃんは色々と忙しくなってしまったが、それでも練習時間は出来るだけ取ってくれた。そしてBRAVE最後の舞台に向けて、一生懸命に練習した。


私もなるべく顔を出して練習を見守る。タカ兄ちゃんの顔を見ると少し胸が苦しいけど、自分で決めた事だ。そう自分に言い聞かせて、真剣に演奏を聴いていた。




予餞会は本来在校生が卒業生を送る為の会だ。だけど両方がいるBRAVEに声がかかったのは、それだけ文化祭の反響が大きかったからだった。


そして実際にみんなの期待を裏切らなかった。演奏は最初から最後まで勢いが衰えることなく全速力で走り抜けていく。


まるでBRAVEそのもののように。


「アンコール!」


「アンコール!」


「…………!!」


全曲演奏が終わっても拍手は鳴り止まず、アンコールの声が聞こえる。初めは静かにするようアナウンスがあったものの、全く収まる気配がない。


そのうち実行委員長とBRAVEが話しを始めた。暫らくするとメンバーは定位置につき、タカ兄ちゃんがマイクをとる。


「時間を頂いたので、もう1曲だけ演奏したいと思います」


なんと中学校始まって以来の予餞会でアンコールだ。


「ワアアアァ……!」


歓声と拍手が体育館中にこだまする。


そして始まったのは、BRAVEが初めて演奏した曲だった。予餞会に向けての練習はしてなかったけど、それを全く感じさせない演奏だ。


カズ君もレイ君も、安住さんもタカ兄ちゃんも……みんな最高だ。


今度こそ曲が終わると、メンバーは揃って観客席に向かってお辞儀をした。


拍手は鳴り止まなかったが、これで終わりだ。


こうしてBRAVEはたった2回のステージで伝説を残していった。



「すごい事になってる……」


数日後の卒業式。校庭でタカ兄ちゃんと安住さんに会った時、二人の学ランには見事に一つもボタンが残っていなかった。


第二ボタンは誰にあげたのかな。気にはなったけど聞かなかった。


「高校でもバンドやるから、よければ文化祭の時にでも聴きに来て」


「はい、ぜひ」


不安な事を言っていたが、安住さんはちゃんと志望高校に合格していた。


「色々ありがとう。元気でね」


「安住さんも」


安住さんはさりげなく手を差し出してくれたので、私も自然に握手が出来た。




「いってきます」


「身体に気をつけてね」


春休みに入ってすぐタカ兄ちゃんは寮へ行ってしまった。


家の前でおばさんとカズ君と共に見送る。カズ君は笑顔で、もう何のわだかまりもないようだ。私も思ったより穏やかな気持ちだった。


段々遠ざかっていく背中を見つめていると、BRAVEもタカ兄ちゃんを好きだった事も一緒に遠くへ行ってしまったような気がした。

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