08 BRAVEのこれから
「あ、こんな時間」
部活が終わってからレイ君の家に寄ったので、すでに7時近くなっていた。
「もう帰るね」
「うん」
レイ君はピアノから顔をあげて返事をしたけど、すぐに意識はピアノに戻ったようだ。
「無理しちゃ駄目だよ」
聞こえてないかも知れないけど一応そう言って、はなれを出た。
「おじゃましました」
夕飯の支度をしているおばあちゃんに声を掛けて玄関に向かう。靴を履いていると奥から足音が聞こえた。
「あれ?」
はなれからレイ君が出てきたのだ。
「今日はカズ君がいなかったな。送るよ」
「そうよ、レイ。もう外は暗いんだから」
おばあちゃんも台所から顔を出して言う。
「でも練習中……」
「いいから」
私の言葉を遮り、レイ君も靴を履いた。
12月にもなると日が暮れるのは早い。
そういえば学校を出る時には日が沈みかけていたのだから、外が暗いのは当たり前だ。道は慣れているつもりだけど、少し怖かったかも知れない。
はなれだと喋るのに、今はお互いに無言で歩く。カズ君と一緒の時は、帰り道でもずっと話をしてるのに。
今までレイ君と二人で歩く機会が少なくて、あまり気にした事がなかった。
冷たい空気が顔をさす。自然と足が速くなる。
このまま何も話さずに家に着くのかな……そう思っていると、レイ君が口を開いた。
「BRAVEは予選会で終わりだ」
最近、予餞会への出演依頼を受けていた。
「えっ……どうして?」
私は思わず立ち止まる。
「タカ兄ちゃんが、高校は野球で推薦入学だから続けられないって」
「推薦……それなら野球に集中しなくちゃいけないね」
バンドを組む前にカズ君の心配していた事が現実になってしまった。それにしてもタカ兄ちゃんの推薦入学は知らず、ちょっと寂しい。
「どうせそんな事だろうと思ったけど」
レイ君の言葉は少し冷たい。だけど今回は気持ちが分からないでもないので、それをたしなめられなかった。
「安住さんは?」
「残るって言ってくれたけど、断った」
「どうして!?」
安住さんはベースが上手だし、色々知識がある。だから今までバンドを引っ張ってくれていたのに。
「安住さんは、もっとレベルの高いバンドがいい。文化祭以外にもライブに出られるような。高校生ならそれが出来る」
「……そうだね」
「それにバンド活動の色々な情報を教えて貰えれば助かるし」
「ちゃっかりしてる」
そう言ったけど、先の事まで考えているなんて……と実は感心していた。
「カズ君は?」
「続ける」
それを聞いて安心する。
「じゃあメンバーは募集するの?」
「コンクール終わったらオーディションしようと思う」
「オーディション!?」
またビックリする言葉が出てきた。
「だって今のレベルから下げたくないだろ」
やはりレイ君は音楽に対する姿勢が厳しい。それで良いバンドになるならいいけど。
それから再び歩き出す。
また無言だったけど、家まできちんと送ってくれた。




