07 文化祭(2)
始めは圧倒されていた観客席も次第に反応し始め、リズムに合わせて身体を動かしたり、拍子を取ったりする人も出てきた。
練習の時だと録音する関係で息を潜めて聴いている私も、今日は周りと同じように聴けるのが嬉しい。
曲が終わりかけから自然と拍手が沸き起こり、音が消えると歓声もあがった。
「すっげーな」
「立派なバンドだ。上手いよ」
「迫力あったねぇ」
もう演奏技術を疑うような人は誰もいない。
次の曲は更にテンポが速くなり、レイ君のドラムソロでは機関銃のような音を叩き出していた。カズ君も初めに比べると表情が柔らかくなって動きも出ている。安住さんは笑みを浮かべる余裕が出始め、荒々しく弾いたりしてギターに負けないで目立っていた。
そしてタカ兄ちゃんは、あちこちから『ボーカルの人カッコイイ』と言われていた。
私はずっと前から知ってたよ。
でも褒められるのは嬉しいけど、女の子が騒いでいるのを見ると……モヤモヤする。
たった2曲だったけどBRAVEの初ライブは大成功だった。
体育館を揺るがすほどの拍手を受けているメンバーは、演奏前と違ってやり遂げた自信のある表情だ。
「美紀ちゃん、どうだった?」
後片付けのために体育館へ戻ると、タカ兄ちゃんがすぐ私に聞いてきた。
「え、えーっと、練習の時よりもっと良かったよ」
カッコ良かった! と答えそうになったけど何とか止めた。
「本当? 美紀ちゃんがそう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう」
タカ兄ちゃんはそう言って笑顔になる。しかし私には眩しすぎて、すぐに他へ目を移してしまった。
「どんな風に良かった?」
片付けの手を止めてレイ君が質問する。
「う~ん、解放感かな。それにBRAVEが心から楽しんでいる感じが伝わったから、観客席も盛り上がったんだと思う」
「……そうだな」
いつもの技術的な感想じゃないけど、レイ君は納得してくれた。
「ライブっていいね」
カズ君が言うと、みんな頷いた。
文化祭が終わってから中学校内ではちょっとしたバンドブームが起こった。
BRAVEが演奏した曲を聴く人が増え、バンドを組もうという人が続出したのだ。
だけどボーカルとギターなどは決まってもドラムを出来る人はなかなかいなくて、結局新しいバンドは誕生しなかった。
レイ君は『臨時でいいからドラムを担当して欲しい』とか『ドラムを貸して欲しい』などと、何人も頼まれたという。もちろん全て断ったそうだ。
「ドラムを貸せって、簡単に言ってくれるよな」
そう言ってレイ君は苦笑していた。
「家に来てもらえばいいんじゃない?」
私の提案に「大事なドラムを簡単に触らせられないよ」と口を尖らせる。
「バンド仲間が増えていいと思うけど」
「それとこれとは話が別。それに当分はピアノが最優先だし」
もうすぐコンクールの本選があった。バンドのせいでピアノがダメになった……と言われたくないと、今はピアノの練習に力を注いでいた。




