04 バンド初練習(2)
長いようで短い一曲が終わった時には、全員額に汗を光らせていた。
「良かったよ!」
私は録音を止めて、みんなの演奏に負けない大きい拍手を送った。
「初めてにしては、いいんじゃない?」
「上出来だよ」
タカ兄ちゃんと安住さんは嬉しそうに言っていた。カズ君は始めボーっとしていたけど、すぐにいつもの笑顔になった。
その中でレイ君は顔を上気させながらも静かに汗を拭いている。そしてその後、私へ向き直って言った。
「ねぇ、今の演奏はどう聴こえた? それぞれのパートごとに言ってみて」
「え……」
「難しく考えなくていい。感じた事をそのまま言えばいいから」
「そ、それじゃあ……」
私はレイ君の有無を言わさない口調に戸惑いながらも、みんなの演奏について感じた事を話した。
さすがに「タカ兄ちゃんの声はカズ君のように綺麗ではない」とは言えなかったが。
初めはみんな不思議そうな顔をしていたけど、段々と私の感想を聞くうちに真剣な表情へ変わっていった。
「なるほどね、参考になったよ。ありがとう」
私の感想を聞き終わると安住さんはそう言ってくれた。
「自分たちだけじゃ、分からない事もあった」
「録音したのと合わせるとよく分かるね」
タカ兄ちゃんとカズ君にも喜んでもらえた。
「吉山さんは良い耳してるね」
「そうですか?」
安住さんに褒められて、ちょっと嬉しくなる。
「それじゃあ、出だしから歌い出しまで合わせましょう」
そんな中レイ君は私に対して何も言わず、あっさりと次の練習へ進めた。
「あ、ああ。そうだね」
他の三人もあわてて準備をする。
「…………」
感想を聞くだけ聞いておいて、レイ君自身は無反応。その態度に少しムッとなった。
次の練習はさっきと違い少しずつ区切って演奏をしていく。難しい部分はゆっくりと、正確に出来るまで繰り返し練習していった。
そのうち最初に演奏した曲でも十分良いと思っていたのに、最後の通しでした演奏はもっともっと良くなっていた。
「じゃあ、今日はここまでにしようか」
2時間後、安住さんの言葉に全員が大きく息を吐いた。
タカ兄ちゃんは「こんなに歌ったのは初めてだ」と言って、コップの水を一気に飲んでいる。
「タカ兄ちゃん、発音が凄く良いよね。ソックリだよ」
「ひたすらテープを繰り返して聴いてたからね。意味は解らないけど、それなりに聴こえてたみたいでよかった」
私が感心していると、タカ兄ちゃんは笑って答えた。
「授業と違って、集中力が違うよな」
「勉強にこれだけ力を注げたら、今頃学年で1番だよ」
そんな事を喋りながらタカ兄ちゃんと安住さんは後片付けをしていたけど、カズ君とレイ君は黙々と動いていた。
特にカズ君は表情も暗く、いつもの様子とは違うので心配になった。
「どうしたの? 具合悪くなっちゃった?」
「ううん、そんなんじゃないよ。大丈夫」
「そう……?」
私の問いかけにカズ君は後片付けの手を止めて返事をしたけど、やっぱり声に元気が無かった。




