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明日のうたが聴こえる  作者: 人見くぐい
第二章 小学生編
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04 2年生

春になって2年生に進級したけどクラス替えはなく担任の先生も変わらなかったので、教室を引越しただけみたいだった。


変わったことといえば、4年生になったタカ兄ちゃんが少年野球チームに入ったことだ。


「僕も4年生になったらチームに入るんだ」


カズ君も野球が好きだが、野球チームに入れるのは4年生からだった。


「レイ君は野球をやらないんだ」


レイ君が学校や外で野球をしているのを見たことがない。


「手をケガしちゃいけないから」


そう言いながら、空中でピアノを弾くように手を動かした。


「あぁ、そうか。それならお兄ちゃんみたいにサッカーはどうかな?」


「キーパー以外はできるかもね。でもどのスポーツでもケガの心配はあるから、先生に怒られるかな」


レイ君は前に比べたら外で遊ぶことも好きになっていた。おばあちゃんは「良いこと」と喜んでいたけど、そうやってできないこともある。何よりもピアノが一番大事だった。


「ピアノの先生に怒られるの?」


「うん。コンクールが近くなると、カッターやハサミも使うなって言われる」


「ハサミも?!」


驚いた私とカズ君は一緒に同じ事を言った。ケガをしないように……というのは分かるけど、そんなに厳しいとは思わなかった。


「さすがに工作ができなくなるから学校では使うよ。でも家ではなるべく使わない」


レイ君は小さく笑いながら言った。


「ピアノって大変なんだ」


「先生が大変なんだよ」


カズ君はまだ驚いているように言ったけど、レイ君はなんてことないようだった。



この後にあったコンクールでも2年生の部で1位と、さらに『審査員特別賞』というのにも選ばれていた。また別のコンクールにも出場して、ここでも金賞をもらった。


音楽のプロが聴いても「良い」と言ってくれるのだから、レイ君のピアノは本当にすごいんだなぁ、と思う。


「ピアニストになるの?」


「なりたい」


コンクールの後でレイ君に聞くと、そうはっきり答えた。





「今の感じで、ゆっくり弾いて」


「う、うん」


レイ君がいつも楽しそうにピアノを弾くので「私も弾けたらなぁ」と言ったら、教えてくれることになった。


そして学校で習った『キラキラ星』を、どうにか指一本で弾けるようになった。ここまででも私には難しくて、軽い気持ちだったのを少し後悔した。


しかしレイ君が左手で伴奏をつけてくれた時だ。ほとんどレイ君のおかげだけど、とても良く聴こえたのだ。


「上手だね、ミキちゃん」


カズ君はたくさん拍手をしてくれた。


「えへへ……」


カズ君がとてもほめてくれるので、照れてしまう。


「楽しかった?」


レイ君は私の顔をのぞき込みながら聞く。


「うん!」


確かに練習は大変だけど弾けると楽しい、というレイ君の気持ちは分かった。だけど自分で弾くより、レイ君の演奏を聴くだけで十分だ。


そして次にカズ君も教わって同じ曲を弾く。


なんとレイ君のような指使いで弾けていたし、私よりずっと上手だった。

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