03 放課後の一騒動(2)
「大丈夫? ヨシヤマさん」
「は……い……」
先生が起こしてくれると、急に涙が出てきた。
この後また帰りの会になってしまった。
私は泣いていたけど、周りにいた女の子達が次々と先生に話してくれた。
からかったヤマモト君は悪いけど、先に手を出した私も悪い……ということで、お互いに謝ってこの騒ぎは終わった。
帰るときになって私は先生に呼び止められた。もっと怒られるのかと思っていたら、先生は優しく話しかけてきた。
「ヤマモト君は恥かしがり屋だから、ついイジワルしちゃったのね」
「イジワルされるのはイヤです」
「もちろん良くないことよ。だけどヨシヤマさんが嫌いでイジワルしてる訳じゃないの」
「……?」
私は分らなかった。普通は嫌いな人にイジワルするのではないだろうか。
「ヨシヤマさんは素直な人だから分からないと思うけど、ヤマモト君を許してあげてくれないかしら」
先生は微笑むと、私の肩にそっと手をかけて言った。
「謝ってくれたから大丈夫です」
私だけじゃなくレイ君にも謝ってもらいたかったけど、そう答えると先生は頷いた。
「でもまたあんまりイジワルが酷かったら、先生に言ってね」
「はい」
もう一度先生は頷くと、ろう下を見る。
「待っていてくれたみたいね。さぁ、帰りましょう」
私もろう下を見ると、カズ君とレイ君が心配そうな顔を覗かせていた。
「はい。先生さようなら」
「さようなら。気をつけて帰るのよ」
私はおじぎをすると、急いで二人のいるろう下へ向かった。
この日からヤマモト君は私にイジワルをしなくなった。私もこの時以外に、誰ともケンカすることはなかった。ヤマモト君とも仲良くできるようになったくらいだ。
でも早く答える競争は、変わらず全部私の勝ちだったけどね。
レイ君のピアノはもっと上手になったので、先生をかえてお稽古することになった。
教室が遠くなったうえに練習も厳しくなったけど、レイ君は楽しそうに通っていた。
そしてレイ君は、秋に行われた全国ピアノコンクールの小学1年生の部で1位になった。
「すごいねぇ、初めて出たのに。さすがレイ君」
カズ君は自分がテストで100点を取るより喜んでいた。
「べ、別にたいしたことないよ。1年生の中でだけだし」
そう言って照れていたけど、私もすごいことだと思っている。
しかし稽古通いと大変な練習のせいか、3学期にぜん息がひどくなり入院してしまった。
おばあちゃんはとても心配して、「こんなに無理をするなら、ピアノを続けさせられない」と言ったくらいだ。
でもレイは全然やめる気はなく、調子がよくなるとすぐ練習を始めた。
「ピアノが本当に好きなんだね」
「うん」
ある時私はレイ君にそう言うと、全然ためらわず返事をした。
「練習は大変だけど、弾いてて楽しい」
「聴いてても楽しいよ」
「そう?」
カズ君が言うと嬉しそうに答える。
レコードもよく聴いていて、とても難しそうな曲でも「いつか必ず弾く」と言っていた。




