02 放課後の一騒動(1)
学校は楽しいけど、思ってもなかったことがある。
それはそれぞれの組によって雰囲気が違っていて、別の教室には入りづらいことだ。
2組や3組に顔を覗かせると、「1組の人が何しに来たんだろう」という感じがして少しイヤだった。もちろん私の組もカズ君やレイ君が来たら、そんな感じになる。
先生は『みんな仲良く』と言うのに何か変だ。
ある日私はレイ君の家に行く約束のため、2組が終わるのを教室で待っていた。
「オイ、今日も他の組のヤツと帰るのか」
急に隣りの席のヤマモト君が話しかけてきた。
ヤマモト君は身体も声も大きくて、とても力持ちだ。体育と給食が大好きで、国語と算数が大嫌い。でもよく私と早く答える競争をしてきて、必ず負けては色々文句をつける。
そんなちょっと苦手な男の子だった。
「そうだけど」
「他の組のヤツと帰ったらダメなんだぞ」
私が答えるとヤマモト君はいばってそう言った。
「聞いたことないよ」
「いけないんだ」
「先生はダメって言ってない」
「同じ組の人と帰れよ」
「いつもは帰ってる。今日は約束だから」
「約束ったって、他の組のヤツだろ」
どうして同じ組とか他の組とか騒ぐのか全然分らない。私は怒りたかった。
しかし丁度2組も終わったようなので、これ以上話しても仕方ないと思って席を立った。
「ダメじゃないんだからね」
「フン、お前そんなにあのオトコオンナと一緒に帰りたいのかよ」
ヤマモト君は私の背中に向かって、鼻で笑いながら言った。
「……なんですって?」
私はヤマモト君に向き直った。
「2組のナルミだろ。弱っちくて、ナヨナヨした女みたいじゃないか」
ヤマモト君はバカにしたように、レイ君のことを言う。
「そんなことない!」
確かにレイ君は男の子の中でも小さい。
でもそれはレイ君が3月の早生まれのうえに、ぜん息もある。見た目も女の子っぽいかもしれないけど、決してナヨナヨなんてしてない。
「幼稚園が違うから知らないくせに。なんでそんなこと言うの?」
私の怒った様子にヤマモト君はちょっとひるんだけど、すぐにいつものいばったように戻った。
「知ってるぞ。アイツ男のくせにピアノ習ってるんだろ。女みたいで変……」
ドンッ!
私は怒りで一瞬にして顔が熱くなったと同時に、ヤマモト君の身体を強く押していた。
「ピアノを弾く男の人もいるよ。レイ君をバカにしないで!」
「いってぇ~知るかよ。お前はオンナオトコだな。ナルミとぴったり……」
私は言葉を止めようと腕を上げたけど、今度は避けられて逆に押し返されてしまった。
ガタッ、ガタン……!
キャア!
ヤマモト君は力が強いので私は倒れてしまう。だけど悲鳴をあげたのは周りの女の子で、私は歯を食いしばった。
「そんなこと言う人のほうが変よ!」
倒れたまま私が叫ぶと、ヤマモト君の顔がみるみる赤くなった。
「なんだと!」
ヤマモト君が手をあげた時、「やめなさい!」と先生が飛び込んできた。




