05 3年生
「えーっと、辻村君」
私は数人の男子と話をしているカズ君に声をかける。
「なに?」
「先生が係りのことでお話しがあるって」
「分かった。ありがとう」
3年生でクラス替えをした時に、カズ君と同じ組になった。
それから教室ではいつの間にか名字で呼ぶようになっていた。カズ君も私を『吉山さん』と呼ぶ。クラスの中で男子と女子がお互い名前で呼ぶ人がいないからだ。からかわれたら恥かしいし……。
始めは変な感じだったけど、いつの間にか慣れてしまった。
久し振りにカズ君とクラスが一緒になって気がついたことがある。
それは他の組だった人にも、カズ君からすすんで話しかけていたことだ。前はあまり得意じゃなかったのに。
さすがに最近は私の後ろをくっついて歩かないし、1・2年生で変わったのだろう。
まだ私のほうが背も高くて走っても私のほうが早けど、いつか抜かされると思う。少し寂しい気持ちはあるけど。
そしてもう一つ改めて思ったのが、カズ君は音楽が得意だということ。
前に片手で上手にピアノを弾いたことがあったけど、音楽の時間でもたて笛を吹けば上手だし歌も声がキレイで聴いていて気持ちがいい。
それをレイ君に伝えるとすぐに「歌を聴いてみたい」と言った。
「え~」
渋るカズ君だったけど、何度もお願いしてレイ君の演奏で歌ってもらった。
「……へぇ、いいじゃない」
聴き終わるとレイ君も感心していた。
「そうでしょう? それに今の歌は音楽の時よりも、もっと良かったよ」
私がたくさん拍手をしながらカズ君に言うと、カズ君は「そうかなぁ」と首をかしげる。しかし歌う前ほど恥かしがったり、嫌がったりはしてないようだ。
「それはピアノがいいからさ」
「とにかくすごい自信だね」
レイ君が得意げなので私は思わずそう言ったが、本当にピアノの違いかもしれない……と思わせるほど、二人の息は合っていた。
「将来、レイ君がピアノでカズ君が歌手になるっていうのはどうかなぁ」
私はそう提案してみたけど、カズ君は目を丸くして驚いていた。
「僕が歌手?! 無理だよ。それに野球選手になりたいんだ」
「そう……」
カズ君が思ったよりも乗ってくれなかったので、私はガッカリしてしまった。
「も、もし歌手になったら……その時はレイ君にピアノを弾いてもらいたいな」
私の様子にカズ君があわてて付け足した。
「本当?」
「本当だよ。ね、レイ君」
「いいよ。カズ君の歌に演奏するのは楽しかったし」
レイ君は初めから乗り気のようだ。
「じゃあ私はファン1号ね」
「えっ、そうなるのかなぁ。恥かしいなぁ」
また照れているカズ君を、私とレイ君は笑って見ていた。
レイ君は今年の夏休みも、ずっとピアノの練習だった。今年挑戦するコンクールは、今までに比べてさらにレベルが高いらしい。
私達が毎日遊びまわっていても、一緒に遊ぶ時間は少なくなった。




