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教会のシスターですが何か?  作者: おきゆむ
第五章 推しのためならたとえ火の中水の中精神のシスターですが何か?
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いざ魔界へ

神父様とアンネに見送られながら、私とオーリュウとドシーは町の外へと出た。


なるべく人目を避けたかったので、偽勇者アイリーンのあと夜以外は守門が立たなくなったのは幸いだ。


まあ、例え誰かに見られも、見た目が人間であるオーリュウとドシーを魔族とは思わないだろう。


町から少し離れた場所で周りに人の気配がないことを確認する。


「オーリュウ様、ここなら大丈夫です」


私は足を止めて、オーリュウの方へと振り返った。


オーリュウの少し後ろにドシーの姿もある。


「分かりました。ありがとうございます」


オーリュウはそう言って笑みを浮かべながら、右手を地面の方へと翳《かざ》した。


すると、彼の右手が向けられていた砂路がポワッと紫色に光り出す。


オーリュウが作り出した魔法陣だ。


そんなに大きくはないが、三人分は充分に立てる大きさである。


「さあ、エメさんも魔法陣の中へ」


オーリュウが魔法陣の中へと足を踏み入れたあと、私にそう言って、スッと手を差し伸べた。


私はその手を取って、魔法陣の中へと入る。


人間に扮しているオーリュウの見た目はイケおじなので手に触れた瞬間、少しドキッとしてしまう。


この容姿でこの気遣いは反則だ。


更に声も良いときた…


とオーリュウに数秒見惚れてしまっていると、後ろから割と強めに押されて思わずよろめきかける。


…何だ?


すぐに後ろを見ると、ドシーが私を押して無理矢理に魔法陣の中に入ってきたのだ。


「ドシー!何をするんですか?…大丈夫ですかエメさん?」


ドシーの横暴にオーリュウが少し声を荒げた。


「…はい、大丈夫です」


苦笑いを浮かべてそう答える。


「…ごめんなさい」


ドシーが呟くように私に謝ったので、私より背の高いドシーを見上げるとドシーは不満げな表情を浮かべていた。


謝るも、何やら納得いかない様子だ。


…私が何かした?


もしかして、嫌われてる?


教会ではそんな風には見えなかっただけに、実に不可解だ。


「さあ、行きますよ」


オーリュウがそう言った瞬間、景色ががらりと変わった。


見渡す限り木々に覆われた場所…インナリィ王国の魔の森だ。


魔界の入り口があるため、そのような名前がついたとか…


魔界の入り口と言っても、ちゃんと魔界の入り口というものがある訳ではない。


ただ、この辺一帯が時空の歪みが発生しやすいというだけだ。


その歪みが時間場所共にランダムに発生し、一定時間は出ているがいつ消えるかは分からない。


タイミングよく出る時もあれば、全く出ない時もある。


まあ、歪みが出やすい時期は存在するので、オーリュウがここの歪みを通ってこちらに来たということは、おそらく今はその時期なのだろう。


「さあ、こちらです」


オーリュウが私の方を見てから、ゆっくりと薄暗い森の中を歩き出した。


私は黙って、オーリュウについていく。


そのあとからドシーがついてくるので、また後ろから押されないか少しだけ不安になった。


やがて、オーリュウの足が止まる。


すると、目の前に大きな時空の歪みが発生していた。


大きさ的にはタオカモイの町の入り口の門くらいだろうか?


歪みは様々な色がぐちゃぐちゃになって、まるで踊っているように見える。


この歪みを通れば魔界だ。


「では、私から先に入りますね?」


そう言って、オーリュウが歪みの中へと入っていった。


オーリュウの姿がスッと歪みの中に消える。


このインナリィにある魔の森から魔界に行ったことはないが、時空の歪みを通って魔界に行ったことは幾度もある。


だから、何の躊躇もない。


オーリュウもそれを知っているから、私と一緒に入らずに先に入ったのだろう。


私もあとを追うように歪みへと歩を進めた。


いざ魔界へ…!


とその時、修道服の裾をギュッと掴まれた。


ドシーだ。


ドシーが何も言わず、私の裾を掴んでいた。


「…どうしました?」


思わず訊ねる。


「…一緒に入ってください」


ドシーが目を合わせずに私に言った。


…なんだなんだ?


まあ、いいかと笑顔で頷いて、私はドシーと共に並んで時空の歪みへと入っていった。

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