私が説得します
魔王幹部オーリュウの話を聞き終えた私はとりあえず部屋の外で私を待っている神父様の元へと報告しに客間を出た。
「エメさん…?…ものすごい顔になっていますよ?」
部屋を出た瞬間、神父様が私を見てそう言った。
「少々、納得がいかない事案がありまして…」
そりゃそうだ。
オーリュウにとって、要はセブンシスターズであれば誰でも良かったということである。
一番近かった…そんな理由で、私はこの貧乏クジを引き当ててしまったのだ。
勿論、立場上絶対に嫌とは言えない。
…だから、せめてこんな顔くらいさせてくれ。
「…神父様。お客様には少し時間を頂きましたので、神父様の部屋で話せますか?」
とりあえずオーリュウ様には神父様や他のシスターに説明する時間が欲しいと言って客間を出てきた。
勿論、これは考える時間ではない。
私に選択肢は無いのだから…
クソッ…!
何でよりによって、インナリィにあるゲートを通って来るんだよ…!
「…分かりました。お話を伺いましょう」
神父様が頷いて、神父様の部屋の方へと歩いていく。
私は再び腑に落ちない表情を浮かべて、神父様のあとについて行った。
そして、神父様の部屋で事情を説明する。
「…そうですか。まあ、あなたの立場上、それは引き受ける他ないのですから、仕方ありませんね。しかし、つい先日帰って来たばかりだというのに、忙しい身ですねエメさんは…」
神父様が机の上に両肘をついて組んだ手を額に当てながら、小さくため息をついた。
対面にある椅子に腰掛けながら、思わずウッとなる。
「…申し訳ありません。教会の仕事が全然出来ていないですよね…?」
しょんぼり顔を浮かべながら、こうべを垂れた。
「いえ、仕事のことではありません。それは他のシスターたちがいますから…ただ、私が言いたいのは、あなたがこの町でゆっくりと落ち着けていないことを心配しているのですよシスターエメ」
神父様の優しい言葉にハッとなる
「神父様…」
私の中の神父様というイメージはいつも私を嫌いになるというものだから、神父様からそんな言葉を掛けてもらうことが奇跡に思えた。
…とはいえ、まだ日が浅いだけで目の前にいる神父様も私というものを知っていくうちに、いずれは私が目の上のたんこぶになるだろう。
まあ、今までも自業自得なのだけど…
「…しかし、困りましたね。アンネさんにどう説明しましょうか…」
神父様がそう言って、再びため息を漏らした。
「…アンネですか?」
神父の言葉に思わず首を傾げた。
「ええ、アンネさんです。あなたがチートーズに出張に行って頂いている間、幾度か私に応援に行かせてくれと懇願されましてね…本当に説得するのに骨が折れました。今回、あなたがまた行くとなれば、絶対について行くと言って聞かないでしょう…」
神父様の困った表情にその苦労が頭に浮かんだ。
「…特に今回は魔界ですもんね。絶対について来られるわけには行きませんね」
と私も想像してたじたじになる。
「…アンネさんには私が説明します。エメさんはくれぐれも気をつけて帰って来てくださいね。ところで、いつ出発する予定なのですか?」
神父様が頭を抱えた状態で私に視線を向けた。
「…まだ決めてはいませんが、すぐにでも発ちたいとは思っています。魔族を…まして魔王の幹部であるあの方々をこのタオカモイに長居させたくはありませんので…」
…そうだ。
このタオカモイに魔王の幹部がいることが、人間にも魔族にも知られた時点で大騒ぎになる。
だから、本日中にはタオカモイを離れなければならないだろう。
…また、しばらくタオカモイとはお別れである。
そして、推しともまた暫しのお別れだ…
「そうですか…では、他のシスターや町の者へは事後報告しておきます。ですので、エメさんは自分のタイミングで出発して頂いて構いませんよ」
神父様のご厚意に軽く会釈をして応えた。
「問題はアンネさんですね…」
神父様が三度ため息をついた。
「…私から説得しましょうか?」
私の申し出に神父様が静かに首を横に振る。
「いえ、私が説得します。エメさんは自分のことだけ考えていて下さい…」
と言った神父様の表情は相変わらず浮かない。
それを見て、素直に心中で神父様も大変だなという感想を抱いた。




