何で私なんですか?
「…本当に申し訳ありませんでしたシスターエメ」
私とオーリュウとの二人っきりとなった客間で、オーリュウが私に頭を下げた。
「いえ、気になさらないで下さい。本当に大丈夫ですから…」
と懸命にフォローする。
あのあと、ジュースのおかわりを要求してきたドシーのために、私は部屋の外にいるアンネにジュースのおかわりをお願いした。
そして、再びジュースを入れてアンネがこの部屋へと戻り、ドシーの前へとジュースを置いた瞬間、一気にドシーがジュースを飲み干してしまったのだ。
そして、再度おかわりを要求した。
勿論、オーリュウはそれを無視して下さいと私に言ったが、あくまでドシーはお客様であるから、そうはいかない。
という訳で、ドシーはアンネと共に教会の食堂へと出掛けて行った。
そして、ドシーがいなくなってから、ようやく落ち着いて本題に入れるという訳である。
「…あれでもドシーは私同様に幹部なんです。だから、もう少ししっかりしてもらわないと…」
オーリュウが頭を抱えながらそうぼやいた。
…たしかにあれは大変だ。
「…でも、幹部ということであれば、腕は一流なんですよね?」
私の質問にオーリュウの顔つきが変わる。
「ええ、勿論です。強さだけなら私に匹敵する力を持っていますよ」
オーリュウが手を膝に戻して、私に視線を向けながら、そう答えた。
その表情から充分に彼女の強さが理解出来る。
「失礼ですが…なら、あなたと彼女でその魔族を倒せばいいのでは?正直言って、私が出る幕はないと思いますよ」
私に倒して欲しい魔族がいる。
そのことを思い出して、オーリュウに言った。
「…出来るならそうしたい。でも、魔王幹部である我々が直接それをする訳にはいかないのです。その倒して頂きたい相手は特に魔族として罪を犯した訳ではありませんから…」
オーリュウの話に頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
「…罪を犯してもいない魔族を倒したいのですか?魔族の上に立つあなた方が…?」
そう質問をぶつけると、オーリュウが薄く笑みを浮かべた。
「はい。彼等は最近力を付けている若い魔族たちで、魔界七魔衆と呼ばれています…罪は犯してはいませんが、あまりに力を付け過ぎってしまった。それが問題なんです…」
オーリュウが深刻な表情を浮かべた。
「シスターエメは魔王の事情をご存知ですか…?」
オーリュウの言葉に思わず私も真剣な表情を浮かべた。
「はい。立場上、その事は存じています」
「なら、話は早い。単純にその事情を彼等に知られては困る。その勢いを止めなくてはならない。かと言って、私たちが手を下す訳にはいかない…だから、貴方に倒して欲しいのです。このままでは、魔界七魔衆が真実に辿り着くのは時間の問題ですので…もし、そうなると魔界だけではなく、人間界にも様々な影響が出ることは貴方も理解出来るでしょう?」
オーリュウの話に、色々と納得がいった。
たしかに魔王軍幹部の立場でその魔界七魔衆を倒すことは出来ないだろう。
かと言って、魔王軍幹部が直接、人間である勇者に依頼するのもおかしな話だし、おそらく並みの勇者ではそいつらに勝てない。
だから、自ずと調律者にと考えるのは納得は出来た。
…だが、一つだけ納得がいかないことがある。
「…話は分かりました。でも、何で私なんですか?調律者であるセブンシスターズはその名のとおり七人います。何故、その中で私を選んだのですか?」
少しだけ、怪訝な表情でそう訊いた。
すると、オーリュウが少し考える様子を見せる。
そして、何かに気づいたように口を開いた。
「我々はインナリィにある魔界の出入り口から人間界にやって来たので、そこから貴方が一番近かった。ただ、それだけです」
オーリュウはさらりとそう言った。
「は?」
きっと、今私は物凄い表情を浮かべているに違いない。




