帰還
出張を終え、一週間の長い馬車の旅を経て、私はようやくタオカモイに帰ってくることができた。
タオカモイの町の入り口の前で馬車を降ろしてもらう。
初めてこの町に来た時は夜だったが、今日は昼前には到着した。
馬車から降りるとすぐに町の方から声が聞こえてくる。
すぐにそっちに視線を向けると、守門と同様に割とたくさんの町の人が私を出迎えてくれていたのだ。
その中心には修道服姿のシスターたちと神父様の姿があった。
…私の帰りをこんなにもたくさんの人たちが歓迎してくれている。
思わず、目頭が熱くなった。
ゆっくりと町の入り口へと歩いて行くと、神父様が先頭になって皆がこちらに歩み寄ってきてくれる。
すると、神父様を押しのけるようにアンネがこちらに走ってきた。
神父様が思わずよろめて倒れそうになるのが、アンネ越しに見える。
「おかえりなさいエメさん!」
目の前でキラキラと眼を輝かせたアンネが私を見上げて、そう言った。
久々の推しとの再会だ。
思わず抱きしめてしまいそうになるのをグッと堪える。
「ただいまアンネ」
アンネを見下ろして笑みを浮かべた。
「おかえりエメさん。出張ご苦労様でした」
神父様がアンネの後ろから、私を労う。
すると、他のシスターと町の人たちがたちまち私を囲んでおかえりとお疲れ様を連呼する。
私は少し困った表情を浮かべるも、内心は凄く嬉しかった。
…私には帰る場所がある。
そう思うと、嬉しくて仕方がない。
私はアンネと神父様、そして町の人たちと共に町の中へと入って行く。
すると、更に町の入り口付近にある広場に老人から子供までの大勢の人が集まってくれていて、私の帰りを待っていてくれたのだ。
広場にはたくさんの食べ物や飲み物が用意されており、これから私の慰労会をしてくれるのだとアンネが教えてくれた。
…おいおい、このサプライズはヤバいでしょ?
思わず目から嬉し涙が流れてきた。
「あっ、エメが泣いてる!」
幼い子供たちに言われて、慌てて修道服の袖で涙を拭う。
「…泣いてないわい。アンタたち私がいない間、ちゃんといい子にしていたか?」
少し屈んで子供たちに視線を合わす。
「あんまりだったよね?特にアイルとモーメットは」
アンネが私の背後から、子供たちに向かって言った。
すると子供たちの中にいる男の子二人が視線を逸らす。
よく見ると、二人とも顔に少しアザが出来ていた。
こりゃ、派手に喧嘩したみたいだなと、笑みを浮かべながら小さくため息を漏らす。
「さあさあ、今日の主役はアンタだシスターエメ!たくさん食べて飲んでゆっくりと疲れを癒してくれ!」
男性に促されるように、私は広場の中央へと移動する。
アンネがお酒の入ったジョッキを私に渡した。
すぐに皆が私に注目していることに気づく。
私は軽く咳をして、ゆっくりと口を開いた。
「…まだこの町に来て間もない私の帰りをこんなにもたくさんの人たちが迎えてくれることが、私はとても嬉しくてたまりません。また、これからもよろしくお願いします」
そう言って、深々と頭を下げる。
すると、それを町の人たちが拍手で応えてくれた。
そのあと、神父様の乾杯の音頭で宴が始まる。
そして、宴は日が沈むまで行われた。




