納得がいったわ
ウィルさんを倒した数十分後に、チートーズの治安部隊が来てウィルさんとレックさんを捕らえた。
二人は抵抗する様子もなく、大人しく治安部隊によって連行されてく。
ウィルさんが連れて行かれる瞬間、僅かに私と目が合う。
すると、ウィルさんが一瞬、口を動かすが見えた。
そして、路地からその姿が消える。
私はただその光景を見て、立ち尽くしていた。
「終わったわね?」
私の肩に手を置いて、ミレイが言った。
「…ほんと、疲れたわ。てか、夜中よ?本当なら教会でぐっすり寝ている時間じゃない?」
と文句を言う。
治安部隊がいなくなった狭い路地には私とミレイ、あと勇者ロートと女勇者ソフィアがいた。
「お疲れ様。まさか、本当に楽勝だとはアッパレね」
女勇者ソフィアが私たちにそう言った。
「あの、結構疑問が残っているんですけど…何でお二人が私たちのことを知っているんですか?それにウィルさんとレックさんが犯人だって分かっていたんですか?」
私は仏頂面でソフィアに訊ねる。
「…あの二人が犯人なんじゃないかとは少し前から疑っていたけれど、あなたたちがセブンシスターズだと知ったのは最近よ」
ソフィアがクスッと笑った。
なんか思っていた印象と随分と違う。
…どういうこと?
「あなたは私のことを嫌な性格の女勇者だと思っているでしょ?」
ソフィアの質問に思わず、図星だと表情に出してしまう。
「…やっぱり。責任は取ってよねミレイさん?」
「ミレイ…?」
ソフィアの言葉に思わず、目を丸くする。
「まさか、アンタ…」
何かに気づいてミレイを睨んだ。
ミレイが惚けたような表情を見せた。
「ミレイさんが私にあなたがセブンシスターズだって教えたのよ。セブンシスターズのことは噂で聞いたことがあったけど、まさかこんな身近にいるとは驚いたもの。しかも、二人も…」
「ミレイ!」
ソフィアの発言に思わず叫んだ。
「…いやぁ、協力者が必要だと思ってさ」
ミレイが目を逸らして言った。
「…なるほどね。納得がいったわ…何でアンタがこんなところにいて、私がいるかが…初めから、アンタは今回の事件を勇者協会に直々に依頼されたのね?」
鋭くミレイを睨みつける。
「…私を呼ぶためのカモフラージュに、協会を使って教会組合にシスターを要請した」
私が続けてそう言うと、急にミレイが切ない表情を見せる。
「…まあ、そのせいでシスターを一人死なせてしまったけどね」
ミレイの演技ではない表情に思わず、これ以上はきつく言えなくなる。
「…出来ればシスターたちには勇者様たちの良い印象を与えたくはなかったのよ。だから、ソフィアさんには性格の悪い勇者を演じて協力してもらった…」
ミレイの言葉になるほど、だから初めダンサンスホテルでシスターには食事が振る舞われなかったのかと理解した。
「だったら私にも言ってよね?何で私も騙す必要があったのよ?せめて、途中からでも言ってくれてもいいじゃない?」
ミレイに文句を言った。
「…既にお前がウィルに感情移入していたからだろ?」
黙って話を聞いていたロートが口を挟む。
「…別に感情移入なんてしていないし」
とロートから目を逸らす。
「そいつに感謝するんだな。その女がもしもの時の保険として俺とソフィアに今夜のことをあらかじめ頼んでいたんだ。そうでなければ、今頃まだ亜空間の中だったかもしれんぞ?」
ロートの口調に、こいつの性格の悪さは演技ではなかったんだなと思った。
…でも、口調や態度はともかく、私たちを助けてくれたあたり、中身まではそこまで悪いやつではなさそうだ。
ダンサンスホテルの従業員の女性が言っていたことはどうやら嘘ではなかったようである。
「…分かったわよ。でも、あとでもっと詳しく教えてよね?とりあえず、ミレイが裏で動いてくれていて助かりました。そして、ロート様とソフィア様のお陰で助かりました。これでいい…?」
無理矢理納得させて、少しやけくそになる。
すると、私の言葉にミレイとソフィアが笑い出す。
しかし、相変わらずロートは無愛想のまま、何も言わずに狭い路地の壁にもたれていた。
不器用かよ…
まっ、助けられたことには間違いないか…
と無愛想に壁にもたれている勇者ロートに感謝した。




