決着
「…強がりを言うな。いくら多少のダメージは回復したとはいえ、雷撃を二回も喰っているんだ。そう容易く動けるものか…」
レックさんが私の言葉を否定する。
「論より証拠。ミレイ、準備はいい?」
私はウィルさんとレックさんに視線を向けたまま、ミレイに訊いた。
「準備はOKよ。ひと通りはしておいたから、あとはアンタが暴れるだけ」
ミレイの言葉にサンキューと呟いた。
そして、すぐにロザリオを両手で力強く握って、レックさんへと向かっていく。
一瞬でレックさんの背後に回る。
そこで、力強くロザリオを振り上げた。
レックさんが声にならない声を上げて、軽々と空高く吹っ飛んでいく。
その際、グリフォンの剣が手から離れたのをミレイがしっかりとキャッチする。
やがて、レックさんが地面に落下してきた。
その時には既に意識はない。
死んではいないが、もうしばらくは目を覚さないだろう。
…さて、あとはウィルさんのみ。
すぐ側にいるウィルさんに視線を向けた。
「…魔法が解禁された瞬間にミレイさんが詠唱なしで、レックに守備力弱化の魔法とスピード遅滞の魔法をかけて、同時にエメさんに攻撃力上昇の魔法と瞬発力上昇の魔法をかけたのですね?」
ウィルさんが相方がやられたというのに、随分と冷静に分析を語る。
「…惜しいですね。レックさんには動体視力低下の魔法もかかっていますよ。あと、私には守備力強化の魔法もかかっています」
ウィルさんに答えた。
「…違う違う。アンタに守備力強化の魔法はかけてないわよ」
私のウィルさんへの返答をミレイが否定する。
「ちょっと!何でかけてないのよ!?」
ミレイの言葉に思わず文句を言った。
「だって、借りをきっちり返すんでしょ?なら、ある程度はフェアじゃないと。ウィルさんはもう魔法が使えない。守備力強化の魔法まではやり過ぎだと思ってね」
ミレイが笑みを浮かべて、私に手を振った。
あとは頑張ってねと言わんばかりに…
クソッ!他人事だと思って…
ウィルさんがライジングソードを構えた。
ライジングソードに雷が帯びる。
「…もう、やめませんか?これ以上は無意味ですよウィルさん」
剣を構えるウィルさんにそう訴えかける。
するとウィルさんが笑みを浮かべた。
「優しい方ですねエメさんは…僕は勇者殺しの犯人ですよ?僕のせいであなたは犯人扱いされて監禁された。そんな僕にかける言葉ではありませんよ?」
…分かっている。
だけど、私はウィルさんが本当に心からの悪には思えないのだ。
「…私はあなたと出来れば戦いたくはないです。ミレイはそれを知っていたから、プライベートホールでウィルさんと私があまり戦わないようにミレイが配慮してくれていた」
そう語りながら、ロザリオを少し下げる。
だが、ウィルさんは剣を下げてはくれなかった。
「…あなたは惑わされているだけです。こんな相手に隙を見せてはいけない。迷わず叩きのめさなければあなたがやられてしまいますよ…?」
ウィルさんが雷を帯びた剣をゆっくりと動かして、今にも雷撃を放とうとしている。
まるで、私に攻撃するのを促すように…
「エメ!」
後ろのミレイが私に叫ぶ。
振り向くとミレイが首を横に振っていた。
そして、再びウィルさんに視線を戻す。
仕方なく、ロザリオをグッと上に上げた。
「行きますよエメさん!」
ウィルさんがそう叫んで、ライジングソードを振り下ろす。
しかし、振り下ろす前に私が投げたロザリオによって、ライジングソードがウィルさんの後方へと飛んでいく。
私はロザリオを素早くキャッチして、そっとウィルさんの肩に手を置いた。
「サンダーボルト」
そう囁いた瞬間、ウィルさんの身体に激しい稲妻が迸る。
そして、ウィルさんが崩れ落ちるように薄暗い地面に倒れ込んだ。




