私たちのターン
「なっ!?一体、何が起きている!?」
突然の出来事にレックさんが驚きの声を上げた。
グリフォンの剣による風がパタリと止む。
そして、暗闇が一気に光に包まれていった。
やがて暗闇は消滅して、薄暗い路地へと再び景色が戻る。
「…ったく。くれぐれも俺の邪魔はするなと言っておいただろ。この阿保が」
プライベートホールが消えて、元の場所に戻ってきた瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
嫌悪感たっぷりのあの声に今はやけに安心感を覚える。
「ロートさん…!」
思わず、叫んだ。
薄暗い狭い路地の中に勇者ロートの姿があった。
「…どいうことですか?何故、あなたがここに…?もしかして、これはあなたの仕業…?」
ウィルさんが面を食らった様子で、勇者ロートに訊ねる。
「フン、お前だけが亜空間魔法を使えるとでも思ったか?」
長い黒髪の目つきの悪い勇者ロートが無愛想に答えた。
「なるほど、あなたも亜空間魔法が使えたのですね…そして、使えるなら勿論、解除することも出来る。あなたを侮っていましたよロートさん…」
ウィルさんがそう言って、薄く笑った。
「おい、女」
勇者ロートが私を見ずに呼んだ。
「だから、エメですってば!…何ですか?」
仏頂面を浮かべて訊き返す。
「俺はもう魔力が空っぽだ。あとはお前たちに任せる」
勇者ロートが狭い路地の壁にもたれて、私にそう言った。
私たちも見ての通り、ボロボロなんですけど…
と思った矢先、私とミレイの身体がキラキラと光出す。
回復魔法だ。
「完全とまではいかないけど、回復しておいたわ」
私たちの後ろから、これまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「…ソフィアさん」
ミレイが後ろを振り返って、名前を呼んだ。
「魔法が使えるなら、楽勝でしょ?なんたってあのセブンシスターズが二人も揃っているんだから」
緑色の髪を靡かせた女勇者ソフィアが笑みを浮かべて、そう言った。
どうやら、勇者ロートと女勇者ソフィアは私たちの存在を知っている者らしい。
「…簡単に言いますね?」
私は後ろを一瞥して、そう言った。
「私はあなたたちの強さは勇者なんかじゃとても歯が立たないという噂を聞いているわ。なら、勇者であるあの二人を倒すなんて訳がない筈よね?」
女勇者ソフィアの言葉に、いくら魔法が使えないとはいえ、さっきまで苦戦していたことが恥ずかしくなる。
「ロートにソフィア…もしかして、私たちが犯人だと気づいていたというのか?だが、ロートは魔力ゼロ…いくらシスターたちが強いとはいえ、手負いの筈だ。ソフィアがいたとしても、私たちの優位は変わらない」
レックさんがそう言って、自信に満ちた表情を見せた。
だが、すでに事は進めている。
「…レック。今のシスターたちは魔法が使える。くれぐれも、気を付けた方がいい…」
レックさんの余裕にウィルさんが釘を刺す。
「なぁに、魔法が使えるのは私も同じ。ウィルは使えなくとも、私が使えるなら充分だ。ウィルはタイミングをみてライジングソードで稲妻を放ってくれ」
レックさんがウィルさんに指示を出す。
それがあまりに滑稽でついつい笑ってしまう。
「…何だ?何を笑っている…?」
私の様子に思わずレックさんが訊いた。
「…別に。ただ、プライベートホールでの借りはたっぷりと返してあげるわ」
そう言って、口角を上げる。
そして、ロザリオを軽く回してから右肩に乗せた。
ここからは私たちのターンだ…覚悟をしろ。




