自由自在
「…私は犯人にされていないわよ」
ウィルさんへの私の返答に思わずミレイが指摘する。
「…さて、そろそろ反撃開始といきますか?」
ロザリオを肩に乗せてそう言った。
「…反撃?そうはさせないさ。もう一度、風神雷神の舞を喰らうといい」
レックさんが剣を構える。
「巻き起これ大せ…」
レックさんが再びグリフォンの剣を振るって大旋風を使おうとしたが、既にレックさんへと投げていたロザリオがそれを阻止する。
どデカいロザリオをまともに喰らったレックさんは後方へと倒れ込む。
いくらこの暗闇で目が慣れているとはいえ、ふいに武器を投げられると流石に対応出来ないようだ。
投げたと同時に走り出していた私はロザリオがレックさんに当たって、地面に落ちる前にキャッチする。
そして、地面に仰向けの状態で倒れているレックさん目掛けてロザリオを振り下ろした。
しかし、ウィルさんが私のロザリオを咄嗟に蹴って、レックさんの身体の上に叩き落とすつもりだったロザリオの位置が僅かにズレる。
素早くウィルさんが態勢を戻して、ライジングソードで私に攻撃を仕掛けてきた。
ロザリオを地面に叩きつけたあとなので、すぐには対応出来ない。
だが、ミレイが槍のように細長いロザリオの先の部分だけを伸ばし、ウィルさんの身体に当てて私を助けた。
ウィルさんが堪らず、体勢を崩す。
そのチャンスを見逃すまいと、地につけたロザリオを振り上げて、ウィルさんに攻撃する。
レックさんが立ち上がろうとするのが横目に薄っすらと見えた。
しかし、ミレイのロザリオが再び伸びて、立ち上がりかけていたレックさんを再度地面に倒す。
ミレイが援護してくれると分かっていたので、初めから私はウィルさんへの攻撃に集中していた。
しかも、随分とこの暗闇の中でも眼が対応出来るようになっていたのだ。
それなのに、私の攻撃はウィルさんには当たらず、力いっぱい振ったロザリオが空を切る。
「…なっ!?」
思わず、声を上げた。
「エメ後ろ!」
ミレイが咄嗟に声を上げて、私に知らせた。
すぐに振り返る。
しかし、もうそれが手遅れだと知ったのは、目の前に雷撃が迫っていたからだ。
雷撃が私に命中して、身体中に痛みが走る。
堪らず、悲鳴を上げた。
痛みのあまりロザリオが手から離れ、その場に倒れ込む。
「エメ!!」
すぐにミレイの叫び声が聞こえた。
しかし、身体が動かせない。
すると、今度はミレイの悲鳴が聞こえて来たのだ。
ミレイ…!?
私は痛む身体を何とか動かして、ミレイがいた場所へと視線を向けた。
暗闇に覆われた場所にミレイが倒れている。
そして、その側にウィルさんが立っていた。
…どういうこと?
ミレイは私とウィルさんからは少し離れた場所にいた。
なのに、ほんの一瞬でウィルさんがミレイのところに移動している…?
まさか…
「その様子だと、どうやら気づいたようだな?」
レックさんの声が頭上から降ってくる。
それと同時にグリフォンの剣の先が私の首の隣に伸びてきた。
そして、レックさんが私に続きを喋り出した。
「ウィルはこのプライベートホールにおいては、自由自在に移動が出来るんだよ」




