風と雷
「…魔法が使えない?なんじゃそりゃ…!」
思わず口に出して叫ぶ。
「…まあ、だからこそ勇者様たちを簡単に殺して来たんでしょ?そう考えるとそんなに驚きやしないわよ」
ミレイが冷静にそう語る。
…いやいや、魔法は使えない上に相手はこの暗闇に慣れている。
圧倒的に不利でしょ!
「まあ、そういうことだ。ウィルのプライベートホールの中ではどんな魔法の使い手も歯が立たない。勿論、剣の使い手であっても、この暗闇の中では思うように戦えやしない…私たちみたいにこの空間の中で訓練されていない者にはな」
暗闇の中からレックさんの話す声が聞こえてくる。
「…でも、驚きました。詠唱なしで魔法を唱えられるなんて…やはりあなたたちは只者ではないようですね」
次はウィルさんがそう話す声が聞こえてきた。
まあ、この空間に囚われた以上、こっちが不利なのは仕方ないか…
それでも、負ける気はしない。
ロザリオを両手でギュッと握る。
そして、攻撃を仕掛けようとした瞬間、何か音が近づいてくるのが聞こえた。
すぐにそれを理解して、身体を動かす。
間一髪のところで頭の上を何かが掠めていったのだ。
すると、隣でミレイが声を上げた。
苦痛を我慢する声だ。
「ミレイ!?」
思わず隣の暗闇に叫ぶ。
「…大丈夫、ちょっと脚を掠めただけ。それよりも今は相手さんに集中してエメ」
ミレイの言葉に安堵する。
どうやら、レックさんの方から何かが飛んできたようだ。
おそらく風の刃のようなものが…
「よく避けた。褒めてあげよう。なら、これはどうかな?」
レックさんがそう言って、体を動かす音がした。
その瞬間、無数の何かが暗闇の前方から飛んでくるのが感覚と音で分かる。
舌打ちをして、ロザリオを振り回し、身体を捻りながら、それらの攻撃を躱した。
どうやらミレイも上手く避けたようだ。
すると、レックさんが口笛を鳴らして、私たちを褒めた。
「やるなぁ、想像以上だ。このグリフォンの剣の真空の刃を見事に全て躱すとは…恐れ入ったよ」
レックさんが私たちを称えた。
どうやら、レックさんの剣は風の能力持ちのようだ。
ということはウィルさんもおそらくは何かの能力を秘めた剣の筈である。
そう考えている矢先、その力が私たちを襲った。
一瞬、辺りが光る。
そう思った時には何かが私の左脚に触れた。
すると、そこから身体中に痛みが走っていく。
思わず、身体がよろめいた。
雷撃…
明るくなったのは稲妻が走ったからだ。
「エメ!」
雷撃を喰らった私をミレイが心配する。
どうやら、ミレイは上手く避けたようだ。
「…ライジングソード。聞いたことがあるわ…魔法なしでも特級魔法しかない雷撃魔法を使える剣があるって…」
ロザリオを地面につけて、なんとかダメージを堪える。
「物知りですねエメさん。苦労しました…この剣を手に入れるのにはね。でも、僕のプライベートホールにとってこの剣は必要不可欠なものになると思っていましたから、絶対に手にいれたかった…」
ウィルさんがそう語る。
きっと、誰かを殺して奪った物だろう…
暗闇の中で魔法を封印された状態からの風の力を秘めたグリフォンの剣と雷の力を秘めたライジングソード…こりゃ数々の勇者様たちが敵わないわけだ。
でも、私たちはそうはいかない…
この短時間であっても、私もミレイもこの暗闇に目が少し慣れてきた。
それに初めから目だけに頼ってなどいない。
次は私たちの番だ。
私は暗闇の中でロザリオを僅かに動かして、ミレイに合図を送る。
そして、その瞬間に私とミレイが暗闇の中で素早く動き出す。
セブンシスターズをなめんなよ…!




