死人に口なし
「…レック」
レックさんの発言にウィルさんが顔を顰める。
「そんな顔をするなウィル。いつまでも隠せることではないだろう?彼女たちは変化の魔法まで使って、私たちを追い詰めたんだ。誤魔化したところでいずれ決定的な証拠を見つけてくるさ。なら、素直に認める方が潔い」
とレックさんが小さく笑った。
「…ずっと二人で勇者様を襲ってきたのですか?」
ミレイがレックさんに問いかける。
「ああ、そうだ。初めの五人は一人のところを襲った。その次は二人まとめて…あとは君たちが知っている通りだよ。エメさんを犯人に仕立て上げるために、一人だけシスターを殺さなかった。そして、ウィルに変化の魔法で変身してもらって、エメさんが三人を殺したように見せかけたんだ」
レックさんがペラペラと真実を話す。
「エメさんには申し訳ないことをしたと思っている。本当にすまなかった…でも、お陰で他の勇者たちは油断を見せた。あの事件でシスターのサポートはなくなったが、大抵の勇者たちは君が犯人で決まりだと思ってくれていたからね」
レックさんがそう言って、笑みを浮かべた。
「…勇者様たちはエメの噂を知っていたんですね?」
ミレイがレックさんに訊いた。
「…ああ、レッドドラゴンに漆黒の魔女。あんな大物を倒してしまえばそりゃ噂にもなるさ」
レックさんが私を見る。
思わず目を逸らした。
レッドドラゴンに関しては、胸糞勇者アルテガが言いふらしたに違いない…
「…初めからエメに目をつけていたあなたたちは勇者協会の行動によって身動きが取りづらくなった打開策として、エメを犯人に仕立て上げる計画を立てた。そのためにはエメに接触する必要があった…ですよねウィルさん?」
ミレイがウィルさんを見る。
ウィルさんは俯いて、ミレイから目を逸らしていた。
「ウィルにはエメさんに接触して、変身出来る様になって貰いたかったからね。しかし、あんなに上手くいくとは思わなかったよ。エメさんのアリバイまでは気にしてはいなかったから…」
レックが再び私に視線を向けた。
「…そして、私を牢獄にぶち込んでいる間に次の標的に手を出した」
レックさんの目を見て話す。
「本当はあの間にもっと殺すつもりだったけれど、思ったより警戒している勇者が多くてね…結局モヨモートとイズラーしか殺せなかった。せっかくエメさんに一時的に犯人になってもらったのに、本当に残念だったよ…」
レックさんが徐々に本性を見せ始める。
「あとは君たちがさっき言った通りさ。その姿のお二人を殺して、勇者殺しの犯人にする。そして、事件に幕を下ろし、私たちはチートーズを去る予定だった…いや、今もその予定だ」
レックさんの言葉にレックさんは観念したのではないことを知る。
「…私たちに真実を話して尚、まだ無事にチートーズを出られると?」
ミレイがレックさんに訊いた。
「…ああ、死人に口なしとはよく言ったものだ」
レックさんが不敵な笑みを浮かべた。
そして、剣先をこちらに向ける。
「その変身を早く解け。レッドドラゴンと漆黒の魔女を倒すのだから、そこそこやれるのだろう?早く私を楽しませてくれ」
レックさんがそう言うと、ウィルさんが剣を鞘に収め、レックさんの剣持つ手を両手で止めた。
「待ってくれレック!彼女たちは勇者じゃない!僕たちの標的はあくまで勇者だ!シスターの彼女らは関係ないだろ!」
ウィルさんが感情的になって声を荒げた。
「騒ぐなウィル。誰か来たらどうするんだ?…思い出せウィル。もう私たちは一度シスターを殺しているんだぞ?」
レックさんがウィルさんを宥める。
「それはレックが…僕は止めたんだ…」
ウィルさんが表情から後悔が滲み出ていた。
「思い出せウィル。私たちの信念を…こんなところで捕まってもいいのか…?お前の中の憎しみはもう癒やされたのか…?」
レックさんがウィルさんの心を揺さぶる。
「…あなたたちの信念って?何で勇者様を殺すの?」
核心に迫る質問を二人に投げかけた。
「…それはお前が話せウィル。そして、お前のすべきことをよぉーく思い出すんだ」
レックさんが腕を掴んでいるウィルさんの手を剥がしながら、そう言った。
ウィルさんが目を瞑って、ため息をつく。
そして、目を開けてゆっくりと語り始めた。
「幼い頃、僕もレックも大切な家族を失ったんだ…勇者の愚かな行為のせいで…」




