真犯人
私が釈放された日の夜、ウィルさんがレックさんと共に暗くなったチートーズ中央付近の暗い道を歩いていた。
勇者様が殺されたばかりなので、常に警戒するようにレックさんが周囲に視線を巡らせている。
更に二人共、剣をすぐに抜けるように鞘を背中ではなく、腰から下げていた。
いつでも戦闘態勢を取れるようにしているのだろう。
「…ニクスとレヴンがしばらくチートーズを離れて身を隠すそうだ」
レックさんがウィルさんにそう話す声が聞こえてくる。
「まあ、これだけ勇者が殺されたらそれも仕方ないよ。しかも、あのイズラーさんとモヨモートさんが殺されたとなれば、無理もない。ニクスとレヴンにとっては彼らは師匠のようなものだったのだから…」
今度はウィルさんがレックさんに話す声が聞こえてきた。
「ロートさんやソフィアさんはともかく、残りの五人も戦意を喪失しているかもしれないね」
ウィルさんが続けて、そう言った。
「…そうだな。あの五人も決して弱くはないし、逃げたりはしないだろうけど、しばらくは身の安全を優先して単独行動はせずに五人で固まって大人しくする筈だ。…ロートさんは性格は悪いが、強さは一流だし、誰が殺されても逃げたりはしないだろうな。ソフィアもロートさんがそうするなら、一緒に戦うことを選ぶと思う」
レックさんが淡々とウィルさんにそう話す。
二人は会話をしながら、どんどん人気のない場所へと入り込んでいく。
まるで、誰かを誘い込むように…
二人の足音を耳でしっかりと把握して、見失わないように後を追う。
すると、狭い路地を曲がったところで二人が急に足を止めた。
そして、ウィルさんとレックさんがこちらを振り返る。
「…誰ですか?いや、誰と誰ですか?一体、僕たちに何の用でしょう?」
ウィルさんが暗闇の中で問いかける。
そして、二人が少しだけ歩み寄ってきた。
すると、驚きの表情をこちらに向けてきたのだ。
「…ロートさん!?それにソフィアさんも…何故ここに!?」
ウィルさんが自分たちのあとをつけてきた正体を知って、驚きの声を上げる。
「…なるほど、そういうことか?」
レックさんが素早く剣を抜いた。
「レック!?」
レックさんの行動に相方のウィルさんが驚く。
「仕方ないよウィル。遅かれ早かれこうなる運命だ…」
レックさんの言葉に仕方ないと言った表情でウィルさんも剣を抜いた。
勇者ロートと女勇者ソフィアも黙って、同じように剣を抜く。
「ロートさんがどうしてここに…」
剣を構えたまま、ウィルさんがやや困惑している。
「そんなことはもうどうでもいいよウィル。さあ、これが勇者殺しの犯人の最後の仕事…」
レックさんの剣の柄を握る手に力が入る。
その瞬間、私は声を発した。
「そこまでよ。私を犯人に仕立て上げて、私を牢獄にぶち込んだ真犯人さん」




