私には無理でーす
「何だ?俺の邪魔をするなと言った筈だ。消えろ」
勇者ロートと再会して、秒で私の堪忍袋の緒が切れる。
ダンサンスホテルで行われた勇者様の交流会に参加した翌日、私は司教様にペアであるロートの住んでいる場所を訊いて、朝早くからチートーズ中央にあるロートの家を訪ねた。
しかし、ロートは不在で仕方なく、周囲の人に尋ねて回ったのだ。
そして、昼過ぎに路上でようやく見つけたロートに話しかけた瞬間、このざまである。
今すぐその頭にロザリオを叩き落としてやろうか…?
ロート様はああ見えて、実は心優しい方なんです。
とダンサンスホテルで働く女性の言葉を思い出して、なんとか堪える。
話し合いだ…話し合い…
「私はあなたのサポートをするのが仕事です。そのためにこの街に来ました。ですから、いくら勇者様が必要ないとおっしゃっても、私は自分の仕事をしなければなりません。だから、消えれません」
私はロートの前に回り込んで、道を塞ぐように立ってロートにやや強い口調で物申した。
すると、ロートが舌打ちをする。
思わず、イラッとした。
「…面倒くさい女だな。まったく、最悪なやつと組まされたものだ…」
ロートが道を塞ぐ私を見て、ため息を漏らす。
お前の方がよっぽど面倒くさいわ…!
と心中で叫ぶ。
「好きにしろ…ただし、俺はお前を認めない。だから、ついてくるだけ無駄だ」
ロートが私を避けて、捨て台詞を吐く。
そのまま、私を置いて歩いていった。
「あー!もうー!」
私は苛立ちながら、ベールの上から力強く頭を掻きむしった。
怒りをグッと抑えて、ロートのあとを追う。
ロートは街を彷徨うように歩いた。
時に誰かと会話して、また歩く。
街のパトロールなのか、勇者を狙う者を誘き寄せるためなのかは分からない。
だが、一人で行動するのは利口ではない。
せっかく昨日、勇者同士で協力をするという話し合いをしたのに関わらず、コイツは単独行動である。
ソフィアとかいう女勇者はどうしたんだよ…?
私は少し離れてロートのあとをついていっていたが、少しだけ勢いよく歩いてロートに並んだ。
「ソフィア様とは一緒に行動しないのですか?」
無愛想な横顔に質問を投げかける。
すると、ロートがこっちを見ずに口を開いた。
「黙れ。お前には関係のないことだ」
はい、無理ー!私には無理でーす!
心の中で完全に諦めた私がいた。
思わず、足を止めて立ち止まる。
構わず、先を歩いていくロートの背中を睨みつけた。
…馬鹿らしい。
一体、アレのどこが心優しいんだよ?
やがて、その背中が見えなくなる頃、辺りは茜色に染まっていた。




