協会の真意
性悪勇者ロートをいい人だと言う女性に任せてくださいと言ってしまったあと、私とミレイは一緒にダンサンスホテルを出た。
外は夜だというのに、そこら中に灯りがついているお陰で随分と明るい。
本当に別世界のようだ。
馬車の停留所まで、街の夜に相応しくない修道服姿のシスター二人が並んで歩く。
「…でエメは協会が教会の組合にシスターを要請した真意をどう見てる?」
ふいに隣を歩くミレイが沈黙を破った。
「やっぱ、警告じゃない?協会が大々的に動くとなるとそれなりに情報は広まるだろうし…そうすれば勇者殺しの犯人の耳にも自ずと伝わる。実際のところ、協会もシスターのサポートなんて期待していないでしょうね」
灯りに照らされた足元のレンガ道を見ながら答える。
「となると、協会は魔族の仕業という線を軽視しているということだよね。まあ、魔族ならこの街でこそこそ勇者を殺したりしないだろうし…」
ミレイが顎に手を当てながら頷いた。
「まあ、勇者が減ることを望む魔族ではない誰かの仕業か、はたまたそれを望む者の意思を代行している者の仕業か…」
と言って、ミレイを一瞥する。
「…ん、何?もしかして、私を疑っている?」
ミレイが顔を顰めた。
「別に…ただ調律者のセブンシスターズなら、勇者を減らすために動くこともあると言いたいだけ。私も最近、人間側の脅威となるレッドドラゴンや漆黒の魔女を倒したとこだしね」
そう言ったあとでニヤリと口角を上げた。
「…ふざけるんじゃないわよ。たしかに時に勇者と戦うこともあるけど、殺したりなんかしないし…大体、こんな街の勇者様なんかいくらいても別に大した影響力なんてないから、そんなことをする必要が私にある訳ないじゃない」
とミレイが珍しくムキになる。
それが可笑しくて思わずクスッと笑う。
「そんなこった私が一番分かっているって、冗談冗談。久々に再会した時の仕返し」
「…ぶん殴るわよマジで」
ミレイが私を睨んだ。
「…とにかく、これで勇者様殺しが止まるか否かだね。まだ、続くようなら犯人は協会を恐れていないということなる。そうすると、かなり厄介な相手の可能性が高い…」
夜空を見上げて、考えを口にする。
「…まるで、自分が戦うみたいな言い方ね?」
ミレイがクスッと笑う。
「まさか…冗談はやめてよ。もう関わりたくないのが本音。このまま何も起きないのが一番だわ。ああ、早く推しの元に帰りたい…」
と脳裏に癒しのアンネを思い浮かべる。
「…ん、おし?何それ?」
ミレイが首を傾げて、私に訊ねた。
私はそれを普通にスルーして、深いため息をつく。
「…あーあ、変な約束しちゃったし、気が乗らないけれど、もう一度勇者様と話し合ってみるか」
手を頭の後ろに組んで、独り言のように言った。
「私はパス。寝泊まりしている教会のお手伝いでもして、のんびり経過を待つわ」
ミレイの言葉に少し決心が鈍りそうになって、夜道の中で再度ため息をついた。




