15分の1の奇跡
ウィルさんの横にはウィルさんと同じく青い髪をした勇者様が立っていた。
さっき、私たちシスターの味方をしてくれた勇者様だ。
「こちらはレック。彼とは勇者になる前から親しくて、今は良きライバルでもありパートナーでもあります」
ウィルさんが自分の隣に立つ勇者様を紹介した。
「初めましてレックです。先程はあなた方シスターに本当に失礼なことをして申し訳ありませんでした」
レックさんがそう言って、頭を下げた。
「気にしないで下さい。むしろ、ウィルさんやレックさんは私たちシスターの味方をしてくださったじゃないですか?謝る必要なんかありませんよ。ねぇ?」
慌てて、頭を下げるレックさんにそう言って、ミレイと名前を知らないシスターに同意を求める。
すると、ミレイと名前を知らないシスターがこくこくと頷いた。
それにレックさんが頭を上げて、安堵の表情を浮かべる。
「…それなら良かった。エメさんですよね?話はウィルから聞いていますよ。とても素直な方だとウィルから伺っています」
レックさんが私に視線を向けて、そう言った。
ウィルさんから聞いている…!?
…やだ、ウィルさんたら。
思わず、顔を赤らめて俯く。
すると、近くからため息が聞こえてきた。
ミレイだ。
一瞬だけ、ミレイを睨む。
「ロートさん。ソフィアさんはどこへ?」
空席を見ながら、ウィルさんがロートとかいう勇者に訊いた。
「知らん。お前らのせいで居づらくなったんだろ?余計な真似しやがって…」
ロートとかいう勇者がグラスを手に悪態をつく。
思わずイラッと来るも、ウィルさんがいるお陰で堪えられた。
「…まあ、くれぐれもシスターの方々には優しくして下さいよロートさん?お力を貸して頂くのですから」
ウィルさんが軽く忠告する。
「…協会が勝手にやったことだ。別に俺にはサポートなど必要ない。却って邪魔になる」
ロートが冷たく反発した。
その言葉に呆れたようにウィルさんがため息を吐く。
「気にしないで下さい。前からロートさんはこういう人ですから…」
ウィルの隣に立っていたレックさんが私にそう言った。
…ほんと、感じの悪い奴だ。
ウィルさんとレックさんが別のテーブルへと移動すると、再びこのテーブルに沈黙が訪れる。
仕方なく、黙々と料理を口にした。
料理は美味しいが、何せ場が悪い。
しばらくすると、食事を済ませたテーブルが多かったため、今後の話し合いとペア決めに移行した。
まずは話し合いが行われた。
まあ、勇者様しか話してはいなかったが、ウィルさんを中心に話し合いが行われたため、スムーズに話が進んだ。
とりあえず、相手が何者か分からないため、しばらく勇者様は常に誰かと行動しなければならないことになった。
ウィルさんとレックさん。
ロートとかいう無愛想と空席。
ロラン様、アルス様、ソロ様。
エックス様、レヴン様、エイト様、ニクス様。
レイ様と女勇者のユウ様。
イズラー様とモヨモート様。
合計、六グループに分かれた。
…説明を聞いた直後は名前と顔が一致していたが、少ししたら忘れる自信がある。
ていうか、全員の名前なんて覚えられないわ…
そして、話し合いが終わり、次はいよいよペア決めだ。
どのシスターがどの勇者様に付くのか…?
私はこの時、15分の1の奇跡を神に祈っていた。




