十五人の勇者
「今すぐシスターの方々をこちらのテーブルに移動させて、食事を用意して頂きたい」
ウィルさんがソフィアという女勇者に向かって言った。
「なっ…シスターにも食事を出せと言うのですか?」
勇者ソフィアが露骨に嫌な顔を見せる。
「何でも言ってくれと言ったのはそちらですが?もし、このお願いを聞いて貰えないのなら、申し訳ないが僕は帰らせて頂きます」
ウィルさんが毅然とした態度でそう発言して、席を立つ。
「私も彼と同意見です。シスターの方々を差別すると言うなら私も帰らせて頂く」
先程、ウィルさんと話していたウィルさんの隣に座っていた勇者様が同じく立ち上がって意見を言った。
「ここにいるシスターたちは勇者協会から教会組合に頼んでわざわざ来て貰った回復のエキスパートです。それをこんな歓迎をするなど言語道断だ。私は彼女たちにこのような仕打ちをする勇者だとは思われなくはないからね」
名も知らないウィルさんの隣の席の勇者様がシスターの味方をする発言をする。
すると、他の勇者も数名が椅子から立ち上がって、ウィルさんに同調するような発言をしていく。
「…分かりました。分かりましたから、席に着いて下さい。ただちにシスターにもテーブル席と食事を用意しますから…」
ソフィアという女勇者がなんとか場を収めようと、仕方なく受け入れる。
すぐにタキシード姿の女性が数名現れて、会場をセッティングし直していく。
その間、勇者様たちは席を立ち、シスターたちが座る前に避難していた。
ソフィアとかいう女勇者を除いて…
きっと、冷たい対応を強いられた私たちの視線が向けられるのが怖かったのだろう。
でも、どの道この中のシスターと組まなければならないのだから、逃げても仕方ないのになと思った。
目の前にいる勇者様たちは14人。
ソフィアを入れると15人になる。
壁際に座っているシスターの人数も15人だ。
なるほど、15分の1か…
と、ウィルさんとペアになる確率を考えた。
しばらくすると、30人分の席と食事の用意が整ったらしく、勇者様たちと共に私たちシスターも中央の白いテーブルクロスの上に料理が並べられているテーブルへと案内される。
これも、全てはウィルさんのお陰だ。
と、ウィルさんに視線を移すと、ウィルも丁度こちらに視線を向けたため、目が合った。
それに、思わず恥ずかしくなって、目を逸らす。
「…ウブ過ぎ。見てて恥ずかしいわ」
と背後からそう囁く声が聞こえた。
振り返らなくとも、それがミレイだと分かる。
…フン!こちらとは久々のロマンスなんだよ…そりゃウブにもなるわ!
心中で吠える。
改めて、仕切直された会はウィルさんの挨拶からスタートした。
「今宵は勇者の方々もシスターの方々もお集まり頂き、ありがとうございます。色々とありましたが、ここは水に流して勇者とかシスターとか関係なく交流を深めて頂きたい。どうか、よろしくお願いします」
ウィルの素晴らしい挨拶のあと、シスターや半分以上の勇者様が拍手を送る。
勿論、私は人一倍大きな拍手を送った。
テーブルは全部で六つ用意されていて、一つのテーブルに5人掛けで座っている。
ウィルさんの提案で、テーブルには勇者様とシスターが交互に座っていた。
しかし、私のテーブルにはウィルさんの姿はなかったのだ。
代わりにあのロートとかいう無愛想勇者と名前を知らないシスターと空席とミレイというなんとも言えないメンバーになっていた。
空席は勿論、あの女勇者だ。
このテーブルには会話が全くないまま、時間だけが過ぎていった。
思わず、空気の悪さにため息を漏らす。
すると、そのタイミングで誰かが横に立つのが見えた。
「どうですか?楽しんでいますかエメさん?」
「ウィルさん!」
ウィルさんの姿に私は思わず歓喜の声を上げた。




