私たちは放置か?
会場内に美味しそうな匂いが広がっていた。
テーブルの上に並べられた料理の匂いである。
ただし、そこに座っているのは勇者様のみで、シスターは全て壁際の丸椅子に座らされていた。
勿論、そこに料理は並んでいない。
…何、このあからさまな扱いは?
と心中で苛立つも顔には出さず、素直にシスターの座るべき場所に腰掛けた。
まあ、まだ立っていろと言われないだけマシか…
シスターの面々をチラッと横目で見る。
まだ空席があるから分からないが、現時点では知っている顔はミレイだけだった。
それよりもミレイ以外のシスターの表情から明らかに不満が漏れていることの方が気になる。
そりゃそうだ…
わざわざ私みたく遠方から呼ばれている者もいるだろう。
なのに、この扱いはあんまりだ。
更にこれから危険が伴う仕事をさせられるというのにこれではシスターたちのモチベーションは上がらない。
これはおそらく勇者様のサポートにつく際、シスターに対等だと思わせないための誰かの意図だろう。
まっ、私は元から勇者は糞ばかりだと思っているからどうでも良いけれど…
むしろウィルさんのような勇者様がいる方がびっくりだった。
とウィルさんに視線を向ける。
ウィルさんは隣の勇者様と何やら真剣な面持ちで何かを話していた。
シスターたちは誰も何も言葉を発さずにただ少し不満げな顔で座っている。
やがて、勇者様の席も埋まり、シスターの席も埋まった頃、勇者様の一人がスッと席から立ち上がった。
長い黒髪の目つきが悪い男の勇者様。
ウィルさんとのデート中に現れた嫌なやつだ…
たしか、名前はロートだったけ…?
「…揃ったようなので、そろそろ始めさせて貰おうか。今日、ここに集まって貰った理由についてはもはや説明はいらないだろう。最近、同士が次々と殺されている。それを危惧した協会がチートーズを拠点にしている勇者を集め、互いに協力をするようにと促した訳だ。あと、回復のサポート役にシスターを要請した。一人に対してシスター一人を付けるようとのことらしい。以上だ」
ロートという勇者様が始めの挨拶を無愛想に済ませて、着席する。
会場に沈黙が流れた。
「ちょっと、ロート!そんな挨拶ある?」
無愛想に座ったロートという勇者様に隣の緑色の髪をした女性の勇者様が文句を言った。
すぐに彼女が席を立つ。
「…すみません。私は勇者のソフィア。今日、チートーズを拠点にする皆様にお集まり頂いたのはこれ以上、被害者を出さないためです。相手は魔族の可能性が極めて高い。なら、皆で協力しないとこの危機は乗り切れません。我々は勇者です。力を合わせて、勇者の力を奴らに見せつけてやりましょう!」
とソフィアと名乗る女勇者が場を仕切り直す。
…すっかり魔族の犯行だと決めつけているじゃん。
「なので、顔見知りもいるとは思いますが、今宵は共に食事をしながら、親交を深めたいとこのような場を設けさせて頂きました。何かありましたら私に言って頂くか、遠慮なくこの宿屋の者に申し付けて貰って構いません。では、皆様ごゆっくりお過ごし下さい」
ソフィアという勇者がそう言って、再び席に座った。
…おいおい、私たちはこのままお前らが食事をしながら親交を深めるまで放置か?
せめて、帰らせてくれ…
今のソフィアという女勇者もさっきのロート同様、勇者という立場が偉いと思っているタチだ。
流石に扱いが酷いだろ。
仕方ないここは勇者様の反感を買うのを承知でひと言物申すか…
と渋々、席を立とうとする。
すると、ウィルさんがスッと手を挙げるのが見えて立ち上がるのを止めた。




