ミレイ
ウィルさんとの素敵な食事のあと、私はウィルさんと共に馬車に乗ってチートーズの南の停留所へと向かう。
ウィルさんにチートーズの南側を案内してもらったあと、次は再び馬車でチートーズの西側へと移動した。
そして、西側を案内してもらって、馬車で教会の前まで送って貰った頃には、もう夕方になっていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎるものだなと、馬車を降りた時にしみじみと感じてしまう。
「今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
私は心からウィルさんにお礼を言った。
「それは良かった。また、お誘いしますね。では、明日の夜にチートーズ中央のホテルでお待ちしています」
馬車の客席から私を見下ろして、ウィルさんが言った。
また、お誘いします…
その言葉にすっかり有頂天になる心を必死に制御する。
「…はい。また、明日の夜に」
そう返事をしたあとすぐに馬車が走り出す。
馬車が見えなくなるまで、私に手を振るウィルさんに小さく右手で手を振りながら見送った。
馬車が見えなくなると、私は教会を囲む塀に思わずもたれて右手で顔を覆う。
…おいおい、これかなりいい感じじゃね?
長い長い冬を越えて、ようやく私にも春がやって来たか…
そう考えると、にやけが止まらなくなる。
しかし、流石に疲れた…慣れないことはするもんじゃないな…
というか、ときめき過ぎて心臓がもたないわ。
と、ふと胸を見下ろした。
その瞬間、胸のロザリオが激しく揺れる。
ハッとなって、すぐに周囲を見渡した。
すると、誰かがこっちに向かってゆっくりと歩いて来るのが見えてくる。
その人物は修道服を着ていた。
私と同じシスターだ。
…そして、その人物を私は知っていた。
「ちょっと…わざわざ教会を訪ねたのに留守ってどういうことよ?しかも、男と一緒?思わず、イラッとしちゃった」
よく知っている声が私に語りかける。
「…アンタも呼ばれてたとは知らなかったわ」
私はベールから赤い髪がはみ出しているシスターに向かって、そう言った。
「たまたまよ…たまたま。私も召集されたシスターの中にあなたの名前があったからビックリした。久しぶりねエメ…会いたかったわ」
私の名を読んだシスターが私の目の前で立ち止まる。
西日に染まった彼女を見ながら私はこう呟いた。
「…ええ、久しぶりねミレイ。私は会いたくなかったけどね…」
突然のミレイの出現にせっかくの浮かれムードが台無しだと、私は小さくため息をついた。




