街案内という名のデート
司教様に話を伺った翌日の朝、私は持ってきた中で一番綺麗な修道服を身につけて、るんるん気分で教会を出てすぐの通りで、人を待っていた。
勿論、相手はあのウィルさんだ。
教会の対応も素晴らしいし、ベッドもふかふかでお風呂もゆっくり入れたし、料理はどれも豪華で美味しいし、更に今日はデートが出来る…
…なんて良い出張なんだ。
アンネには申し訳ないが、控えめに言って今の私は幸せです。
…と、浮かれてばかりはいられない。
正直、これくらいきちんとしたもてなしをしてくれるということは、それだけ大変なことが待っているという事だ。
なら、今はそれを忘れて存分にデート…いや、街案内を楽しんでやる。
「お待たせしました」
あれやこれやと考えていると、急に声をかけられてハッとなる。
すぐにその優しい声の方へと顔を向けた。
「…おはようございますウィルさん。今日はよろしくお願いします」
しおらしく挨拶をする。
「おはようございますエメさん。こちらこそよろしくお願いします」
と互いに挨拶を交わした。
「あっ、そうだ。教会の方にひと言、僕から今日のことを言っておきましょうか?」
ウィルさんが気を遣ってくれる。
「いえ、明日の夜までは自由にしていいようなので
その必要ありません。お気遣いありがとうございます」
猫被りの声を出して、そう答える。
「…ホテルで行われる会まではってことですね?勿論ですが、それに僕も参加しますよ」
ウィルさんの言葉に思わず顔が綻ぶ。
…昨日、司教様が勇者様一人に一人のシスターとおっしゃっていた。
なら、私がウィルさんに付く可能性があることになる。
「…はい。少し不安でしたが、ウィルさんが来られるなら安心です…」
少し俯きながら、そう発言する。
もし、私をよく知る人物が今の私を見たら、おそらく凄い眼で私のことを見るだろう。
「僕もエメさんみたいに素敵なシスターが参加されるなら嬉しいですよ。さあ、行きましょうか?そこで馬車を待たせていますので」
ウィルさんがそう言って、私を誘う。
「…馬車ですか?」
思わず、驚く。
「ええ、チートーズは広い。女性をあまり歩かせるのは好きではないので、馬車の方がいいかと。馬車はお嫌いですか?」
ウィルさんの言葉にすぐに頭をぶんぶんと振った。
「良かった。では、行きましょう。さあ、こちらです」
ウィルさんがそう言って、私に右手を差し出した。
それを少し躊躇いながら、左手を乗せる。
すると、ウィルさんがその手を優しく握って、私を馬車が停車している場所へと案内してくれた。
…もう、この時点で私のハートは崩壊寸前だ。
勿論、嬉しいという意味で…
こうして、私とウィルさんのデートは始まった。




