勇者教会の要請
ウィルさんと別れてから、私は神父様に言われていた教会を訪ねた。
「チートーズの北側にある教会を訪ねて下さい」
と言われていたが、北側だけでどんだけ教会があると思っているんだあのマヌケ神父様め…
この教会に入った時、迎えてくれたシスターに素性を説明をすると、教会に入ってすぐのところにあるフロアで少し待つことになった。
そのフロアの椅子に腰掛けて、心の中で神父様に悪態をつく。
「お待たせしました。どうぞ、中へお入り下さい」
先程のシスターに案内されて、奥へと歩いていく。
その通路には絨毯が敷かれていて、華麗な内部装飾が施されている。
外見の時点でタオカモイの教会よりも大きくて立派だとは思ったが、中は予想以上だった。
タオカモイでも以前の村の教会とは雲泥の差があったのに、更にこんな素敵な教会を訪れてしまうと、今更あの村の教会に戻れと言われても、絶対無理だ。
通路の奥にある部屋へと案内されて、部屋の中に入ると机の上に手をついて椅子に腰掛けていた男の人が私へと視線を向けた。
「この教会の司教をしているクリフです。チートーズにようこそシスターエメ」
司教様が私に微笑み掛ける。
「さあ、遠慮なくお掛けになって下さい」
司教様に促されて、用意されていた椅子に座る。
そのタイミングで私をこの部屋へと案内してくれたシスターが軽く会釈をして退室していく。
「この度はこの話をお受け下さり、ありがとうございました。無理を言って、本当に申し訳ありません」
司教様とあろう者が私なんかに丁寧に頭を下げる。
私は慌てて、とんでもないと両手を左右振った。
神父様より立場が上の司教様。
なのに、この謙虚さは素晴らしい。
しかも、タオカモイの神父様よりも年齢が若く見える。
「…少し話はタオカモイの神父様から伺っています。何でもこのチートーズで起こっている勇者様殺しの件で、勇者協会が私たちシスターの力を借りたいとのことですよね…?でも、具体的に私たちシスターは何をしたらいいのですか?」
私の質問に司教様が愛想良く頷く。
「一人の勇者様に一人のシスターが回復役として付いて頂きたい。それが勇者協会の要請です。正直、詳しいことは私もあまり聞かされていないのです。
おそらく、立て続けに起きている勇者様殺しに勇者様たちが立ち上がり、事件を解決しようという動きがあるようで、それに対してそのような要請が出されたのかと…」
少し申し訳なさそうに司教様が説明する。
「とりあえず、明後日の夜にチートーズの中央に位置するホテルで勇者様たちが集まる会が開かれます。そこにあなたも行って頂きたい。詳しい事はそこで説明をしてくれる筈ですので。それまではこの教会でゆっくりして下さい。困ったことがあれば何でも私かこの教会のシスターに申してくれれば、出来るだけのことは致します」
司教様のその言葉に、それだけ勇者協会の要請というものが、いかに偉いものかが窺える。
「…明日、朝から出掛けても構いませんか?知人がこのチートーズを案内してくれるようで…」
早速、申し出る。
相手が勇者様ということは一応、伏せておく。
「ええ、構いませんよ。明後日の夜までは自由に過ごして下さい」
司教様の返答に思わず安堵する。
これで、デートが出来る…
と喜びが顔に出ないように気を引き締めて、このあとの残りの司教様の話に耳を傾けた。




