勇者ウィル
「エメさん。あちらがあなたが探している教会です」
ウィルと名乗る勇者様に案内されて、私は教会の前へとやって来た。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
と丁寧に頭を下げて、ウィルさんにお礼を言う。
「いえ、私たちはこれからあなた方の力を借りる立場です。これくらいはお安い御用ですよ」
そう言って、ウィルさんが笑みを浮かべた。
なんとも笑顔が似合う勇者様だ。
「私たち…いえ、本当に私なんかが勇者様のお役に立つのでしょうか?」
今回の出張の概要を詳しく知らない私はそう不安を口にした。
「ええ、少なくとも僕はそう思っていますよ」
勇者様の笑みに癒される。
「では、僕はこれで」
にこやかに勇者様がそうおっしゃって、私から離れていく。
「ウィル様!」
思わずその背中を呼び止める。
ウィルさんが嫌な顔をせずに立ち止まり、こちらを振り返った。
「様はやめて下さい。どうも落ち着きません。勇者だからと言って偉い訳ではないのですから」
ウィルさんが苦笑いを浮かべる。
「それに日頃、シスターの方々の方が世間に貢献していますよ。だから、そこに優劣なんて僕は付けたくない」
と少しだけウィルさんが真剣な面持ちになった。
「…すみません」
ウィルさんに謝る。
「謝らないで下さい。別にエメさんを責めている訳ではないですよ?ただ…勇者だからと言って偉そうにする者が僕は嫌いだと言うだけです」
ウィルさんが再び私に近づいて、そう言った。
その言葉にやはりドラゴンの谷での胸糞ヘタレ勇者の振る舞いを思い出す。
「…私も嫌いです」
素直にそう言うと、ウィルさんがクスクスと笑った。
釣られて私も笑う。
「エメさんって面白い方ですね?なんというか素直って感じで…僕は好きだなそういう人」
ウィルさんにそんなことを言われて、思わず顔が熱くなる。
好きって…ちょっと待って…!?
「そうだ。明日、時間あります?良かったらチートーズを案内しますよ。多分、まだ明日にはやる事はないと思いますから」
ウィルさんの言葉にどうやらウィルさんは私のここでの仕事を把握している様子だと分かる。
ということなんかよりも私はウィルさんのお誘いの言葉に動揺した。
勿論、嬉しさから来る動揺だ。
「…は、はい!この教会の方にお伺いして許可を頂けたら是非お願いします!」
と少し声が裏返る。
「では明日の朝、ここに迎えに来ますね。教会の方には私からも口添えしますから安心して下さい」
ウィルさんは私にそう言って、手を振りながらここを去っていく。
私はその様をボッーと見送っていた。
街の案内って…二人っきりで…?
最早、デートだろ!?
…私にも遂に春が来たか?
嗚呼、出張サイコー…
と人知れず歓喜の涙を浮かべた。




