覚悟は出来てるんだろうな?
「一歩でも動いてみろ。アンネの首が飛ぶことになるぞ?」
追い詰められたアイリーンがアンネを人質にして私を脅す。
アンネのか弱い首に剣の刃が当てられる。
「…私の推しに何をしやがる」
私はただじっと動かずに怒りを露わにした。
「脅しではない。私が誰彼構わず殺すことは知っているだろう?」
とアイリーンが私に釘を刺した。
アイリーンはアンネを殺す気だ。
アンネの首を刎ねて、私が動揺したその隙に逃げるつもりだろう。
おそらく、このままアンネの首が刎ねられてしまえば、アイリーンの策は成功する。
…まあ、あくまで首を刎ねることが出来たらの話だ。
「…お前は私を怒らせた。その罪は重い」
そう呟いた瞬間、私は右手を右から左へと移動させた。
私が動いたことでアイリーンが反応する。
しかし、ドラゴンスレイヤーの剣身を当てていた筈のアンネがいなくなっていることに気づいたアイリーンが驚きの表情を浮かべた。
「ど、どうなっている…?」
アイリーンが咄嗟に私を見る。
すると、アイリーンが再び驚きの顔を見せた。
「…なっ、どういうことだ!?」
アイリーンがいつの間にか私の腕の中に移動していたアンネを見て、驚きを口にした。
「…あれ、エメさん?」
アンネも不思議そうに私の顔を見上げた。
私は移動魔法を使って、アイリーンに捕まっていたアンネを自分の腕の中に移動させたのだ。
勿論、私に詠唱は不要である。
「推しを怖い目に遭わせた覚悟は出来てるんだろうな?」
私は腕の中からアンネを解放して、アイリーンへ宣告する。
アイリーンがすぐに身構えた。
が、その時には既に私はアイリーンの背後に立っていたのだ。
そして、アイリーンの右肩にそっと触れる。
アイリーンがようやく私が移動したことに気づいて、こちらを振り向く。
だが、既に手遅れだ。
「サンダーボルト」
そう囁いた瞬間、アイリーンの身体に激しい稲妻が迸る。
そして、アイリーンの身体のあちこちから煙が上がって、気を失ったアイリーンが前に崩れ落ちた。
さっきも言ったが、私に詠唱は不要だ。
アイリーンを見下していると、突然拍手が聞こえてきた。
「素晴らしい強さだ。特級魔法しか存在しない雷撃魔法を使うなんて…しかも、詠唱無しに…いやいや、王国魔術士顔負けですよ本当」
私が魔法陣から呼び出した58人の魔術士の一人であるカリオスさんが拍手をしながらこちらに歩み寄ってきた。
「…見られてましたか?気配を消すなんてズルいですよカリオスさん…」
イケメンのカリオスさんに視線を向けて、参ったなとベール越しに頭を掻いた。




