神の御加護
「完全にやられたよシスターエメ。私の正体を見破り、私をまんまと欺いた。本当に見事だ」
アイリーンの台詞に周囲がどよめき始める。
「アイリーンって名前も偽名?」
すっかり開き直っているアイリーンに訊ねる。
「…そうだ。名前などとっくに捨てた。都合に合わせて、容姿や名前などいくらでも変えるさ」
「何でこんなことを…?」
私の隣にいるアンネが切実な声で訊いた。
「それは愚問だアンネ。平和ボケしているお前らに私たちの気持ちなど到底、理解など出来ない」
アイリーンが冷たくそう言い放つ。
「さて、くだらない話はそろそろ終わりだ。魔物の召喚に失敗したことと私の正体がバレてしまったのは少々誤算だったが、まあそれだけだ」
アイリーンがニヤリと笑う。
「外にいる仲間とここにいる私。それだけでこの町など容易く壊滅させられる。言っておくが、私は偽物でも、以前この町に現れたキマイラは紛れもなく本物だ。用意するのに少々手こずったが、町人を騙すにはあれくらいの魔物を倒すのが一番だったからな」
アイリーンが饒舌にそう話す。
この女の言う通り、キマイラを簡単に倒せる偽勇者と百人以上の盗賊たち相手にここにいる町の男たちだけで戦っても結果は見えている。
「…エメさん」
アイリーンの言葉に不安を感じたアンネが私の修道服の袖をぎゅっと握った。
「心配しないでアンネ。私たちはいつも神様に祈りを捧げている。きっと、神様が私たちをお助け下さるよ」
アンネの頭に優しく手を置いた。
すると、私の言葉にアイリーンが過剰に反応する。
「神様が助けてくれるだと!?笑わせるな!この世に神などいない!そんなものに願ったところで何も変わりはしないんだ!」
アイリーンが怒号を飛ばした。
まるで、かつて自分も神様を信じて祈っていたかのように…
そして、アイリーンが口に親指と人差し指を当てた。
それと同時に大きな口笛が鳴り響く。
「さあ、これからこの町も他の町や村同様に皆殺しのショーが始まる。子供から老人まで全て皆殺しだ」
アイリーンがそう言って、自身の剣を鞘から引き抜いた。
町の外に待機していた盗賊が一斉にこちらへ向かってくる。
「エメさん!アンネさん!魔法で皆さんをサポートすますよ!」
神父様が声を張り上げて私たちに指示を出す。
しかし、私は首を横に振る。
「大丈夫ですよ神父様。我々には神の御加護がありますから」
そう言って、冷静に左手を天に翳す。
その瞬間、私の左手から眩い光が放たれた。




