突然の魔物
私は町の入り口から、悲鳴の聞こえてきた町の中へと守門の一人と一緒に走って向かった。
すると、町の中に大きな木が暴れている。
いや、それは木ではなく木の魔物だ。
「エビルツリーか…それにしてもデカい…」
隣の守門が魔物を見て、少し怯えた様子でそう言った。
「…たしかにあの大きさは普通は見かけませんね」
そう冷静に口にした。
「しかし、ずっと我々は入り口を守っていた。なのに、どうして町の中に魔物がいるんだ…?」
守門の疑問に私も不思議そうな表情を浮かべた。
「勇者様だ!アイリーン様がいらしたぞ!」
枝のような腕を振り回して暴れていたエビルツリーを少し離れたところで見ていると、町人の一人の男性がそう叫んだ。
すると、さっきまで怯えた表情を魔物に向けていた守門や町の人たちがたちまち安堵の表情を見せる。
「ここは私に任せて、皆さんは出来るだけ遠くに避難していてください!」
薄い桃色の長い髪、整った顔、その勇敢な姿…
勇者アイリーン様の登場だ。
「…シスターも避難した方がいい。俺は役に立つかは分からないが、援護出来たら勇者様の手助けをするよ…」
怖がった表情で守門の男性が言った。
まあ、勇者様とはいえ、アイリーン様は女性だ。
女性に任せて逃げる訳にはいかないよな…
納得して、分かりましたとあっさり答え、私はこの場からそそくさと逃げていく。
この間、私に出来ることをやらなければならない。
モタモタしている時間などはないのだから…
しばらくして、私の耳に朗報が届いた。
勇者様が魔物を倒したという朗報が…
その朗報に思わず安堵の表情を浮かべた。
町の中を入り口に向かって歩いていくと、町の人たちがまるでお祭りのように騒ぎ喜んでいる。
そして皆が勇者様への感謝を口にしていた。
あれだけの大きなエビルツリーをこの時間で倒すとは、流石は勇者アイリーン様だ。
その実力は見かけ倒しではないことが分かる。
このまま、ちゃんと勇者様がこの町におられればこの町も安泰だ。
そうなることを願うばかりである。
私は喜びの声を上げる人たちの横を通り過ぎて、町の入り口にいるアンネのところへと急いだ。
「エメさん!?良かった…無事だったのですね?なかなか戻って来られないから心配しました…」
と私を見るなり、アンネが涙目を浮かべた。
「この町には勇者様がいるのに、私に何かあるわけないじゃない?ねっ、守門さん?」
アンネの隣に立つ守門に振った。
「ああ、そうさ。やっぱり勇者様は凄いよ。俺たちの出る幕なんて本当にないね…」
と守門が苦笑いを浮かべる。
「…エメさん?汗がびっしょりですよ?」
私を見てアンネが私の修道服を指差した。
「…アンネが心配しているかと思って、走ってきたからね。教会に戻ってシャワー浴びなきゃ」
アンネに笑顔でそう言った。




