勇者アイリーン
アンネの案内でその勇者様の元へと向かった。
前方から子供たちの声が聞こえてくる。
すると、その子供たちの中に大人が一人混じっていた。
薄い桃色の綺麗な長い髪の女性。
その女性は女性らしからぬ、整ったその顔立ちを引き立てるような勇ましい格好をしていた。
「おはようございます勇者様」
彼女に向かって、少し前を歩くアンネが挨拶をする。
アンネに気がついた勇者様がこちらに視線を向けた。
その際に私とも目が遭う。
「おはようアンネ。おや、今日はその方に町案内をしているのかな?」
勇者様が子供たちから少し離れてアンネに歩み寄る。
「はい。こちらはこの町の教会で新たに働くことなったエメさんです」
アンネが私を勇者様に紹介する。
「エメです。今日からこの町で働くことになりました。よろしくお願いします」
そう自己紹介をしたあとで、軽く会釈をする。
「ようこそタオカモイへ。て私も最近この町にやってきたばかりですが…」
勇者様がそう言って笑った。
「私はアイリーン。こちらこそよろしくエメさん」
勇者様がスッと手を差し出した。
私は手を伸ばし、勇者様と握手を交わす。
「アンネから聞きました。何でも、この町を魔物から守ったそうで?」
私がそう言うと、勇者様が少し照れ臭そうな表情を浮かべた。
「…そんな大層なものではないよ。たまたま、魔物を倒すことが出来ただけさ。次に魔物が現れた時は同じようにそれが出来るか自信がない…」
勇者様がそう言って謙遜する。
「…でも、この町に留まっていらっしゃる。それはまたそのようなことが起これば勇敢に立ち向かうということでしょう?素晴らしいです。流石は勇者様だ」
そう勇者様を褒める。
すると、さっきまで勇者様と遊んでいた子供たちが続きを勇者様に求めてきた。
「こらっ、勇者様にあまり遊んで貰ってはいけませんよ。勇者様には町を魔物から守るという大事なお仕事があるのだから」
アンネが子供たちに向かって、少しだけ怒った。
…怒った推しも可愛い。
「ちぇっ、つまんねぇ」
「また、遊んでね勇者様?」
子供たちがそう言って、勇者様に手を振ってこの場から立ち去っていく。
「ああ、分かった。また遊ぼう」
勇者様が優しい笑みを浮かべて、子供たちに手を振り返した。
「…子供、好きなんですか?」
子供たちと勇者様のやり取りを見て、そう思った。
「好きかと聞かれるとそうではないかもしれない…でも嫌いじゃないよ。子供たちは純粋で可愛い。私はああいう笑顔を守るために勇者になったのだから…」
勇者様が子供たちの姿を見つめながら、そう言った。
「良かったら、今から少し私の家に来ないか?見たところ私と歳が近そうだし、色々と話せると嬉しいな」
勇者様が私の方に視線を戻して訊いた。
了承を得るように、アンネの顔を見る。
アンネが笑顔で頷いた。
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔します」
と勇者様に視線を戻し、笑顔でそう答えた。




