ふかふかのベッド
夜遅くに訪ねて来たにも関わらず、教会の者が私を入り口の門まで迎えに来てくれた。
迎えに来てくれたのは私より少し若そうに見えるシスターだ。
教会の了承を得て、素性を理解して貰えた私は町の中へと入ることが出来た。
そして、教会に行くとそこの神父様が笑顔で私を歓迎してくれた。
この町へと向かうのに、歩いて行ってらっしゃいと送り出してくれた前のところの神父様とはえらい違いだ。
もう深夜のため、この日はすぐに寝ることになった。
「詳しいことは明日にしましょう。旅の疲れもあると思いますし、明日の朝は早く起きなくて構いません。ゆっくりと寝てください」
その神父様の優しい心遣いに、思わず目に涙を浮かべてしまう。
…いや、ほんとどこの誰かさんとはえらい違いだよ。
神父様におやすみなさいと挨拶を交わしたあと、私を入り口まで迎えに来てくれたシスターが今日から私の部屋となる場所まで案内してくれる。
「私はアンネです。よろしくお願いします。あなたはエメさんですよね?色々と噂は聞いています」
アンネと名乗った彼女が教会の二階の廊下を歩きながら、私に話しかけた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。…ところでその色々な噂とはなんですか?」
まだ、出会って間もないため、互いに遠慮して敬語となる。
「酒を呑んで酔っ払って暴れて神父様の逆鱗に触れて前の教会を追い出されたとか、村を訪ねてきた勇者様をぶっ飛ばしたとか、エメさんがここまで歩いてやって来るとか…でも実際、会ったら優しそうな方だったので噂は噂だったんだなと安心しました。神父様もどんな方がやって来るか心配しておられていましたので」
アンネの言葉に無表情のまま、何も言えなかった…
事実ではないが、全くデタラメという訳でもない。
…なるほど、それで神父様はあんな笑顔で私を迎えて下さったのかと納得する。
一体、どんなイメージを持たれていたのかを想像するととても怖い。
「では、おやすみなさい。明日の朝は本当にゆっくりしてくださいね。何かあれば私が隣の部屋にいますから遠慮なく仰って下さい」
そう丁寧な説明を受けて、部屋の前でアンネと別れた。
そして、自分の部屋の中へと入る。
早速、背中の荷物を降ろして、部屋の隅に置いた。
部屋を見渡すと、割と広いのに一人部屋だという。
前の村ではこれより狭くてミーナと相部屋だった。
とはいえ、それはそれで楽しかったから文句はない。
私は部屋のベッドに目を向けた。
ふかふかのベッドがそこにある。
時間が時間だったので、風呂にはありつけなかったが、これは叶ったからかヨシとしよう。
そう納得して、私はそのふかふかのベッドに飛び込んだ。




