早く風呂に入りてぇ…
あれから私はクラリスとインナリィ王国の魔術士たちと共にインナリィ城下町へと向かった。
「クラリス様の命の恩人をこのまま何のお礼もせずに帰す訳には行きません」
と言うカリオスさんのご好意を必死で断って、なんとか私は城へと行かずに済んだ。
なので、クラリスとは城下町でお別れになった。
「タオカモイに行くのよね?なら、そんなに遠い場所ではないので、近いうちにエメに会いに行くわ」
と別れ際そんなことをクラリスが言った。
「待って待って!?クラリスが町に来たら町中大騒ぎになるって…!」
「そう…?なら、落ち着いたら私に会いに来てくる?」
クラリスがなんとも可愛げのある寂しそうな表情を浮かべた。
そんな顔をされたら嫌とは言えない。
「ええ、必ず会いに行く。約束する」
そう言って、握手を交わして私たちは別れた。
王国の謝礼を断った私は代わりにタオカモイまで馬車で送ってもらうことになったのだ。
そして、現在その馬車に揺られながら、道中の景色を楽しんでいた。
盗賊に襲われてしまった割と大きめな客車がついた馬車とは違い、この馬車は御者のすぐに後ろに二人くらい座れる席が付いているタイプだ。
隣の席には私のどデカい荷物がどんっと置いてある。
狭いと言えば狭いが、外の空気を感じられるので、今の気分にはぴったりだ。
城下町を昼前に出発したので、タオカモイに着くのは夜遅くになってしまうだろう。
まあ、村からずっと歩くことを考えたら、随分と良くなった方である。
「それにしてもシスター。王国の謝礼を断るなんて、アンタ随分と変わっているね?」
前にいる御者が私を一瞥して、そう言った。
御者だけは前の馬車同様におじさんだ。
それに前の御者のおじさんを思い出して、少し切なくなる。
「私は神に仕えるシスターですから、そういうのは断れと教えられているもので…」
「なるほどね…」
私の返答に御者のおじさんが納得する。
…でも、ほんの少しは城に行きたい気持ちがあった。
何故ならカリオスさんがイケメンだったからだ。
ああ…たまにはあんなイケメンとデートしてみたい。
「シスターよだれがたれてるよ?」
御者のおじさんの指摘に慌てて袖でよだれを拭く。
その時、修道着がやや匂う気がした。
おそらく身体も…
…こんなんでカリオスさんの近くにいたと思うとゾッとして、今度クラリスに会いに行く時にカリオスさんに会わす顔がないと落胆する。
ああ、早く町について風呂に入りてぇ…
心中でそう切実に願った。




