恥ずかしいこと言わせんな
イダジンの方へとカリオスさんが歩いていく。
私もそのあとをゆっくりとついていった。
「イダジン。お前の陰謀は既に暴かれている。勿論、王の耳にも届いている。もう諦めろ…お前の息子二人も漆黒の魔女の封印を解く手助けをしたことを認めているのだ。大人しく捕まれば命だけは助けて貰えるだろう」
カリオスさんが二人の魔術士によって地面に取り押さえられているイダジンに上からそう言い放つ。
「くそっ…こんな…こんな筈ではなかったのに…お前のせいだ!お前さえいなければ私の作戦は上手くいっていた筈なんだ!」
地面に身体を押し付けられているイダジンが私を恨めしそうに見上げていた。
…いやいや、さっきまで漆黒の魔女を倒してくれて感謝してるって言ってたじゃん。
「シスター!一体、お前は何者なんだ!?ただのシスターなんかでは絶対ない筈だ!」
イダジンがまだしつこく私に問いかける。
それ漆黒の魔女が私に訊いてきた時に答えた筈だけど…?
そこにアンタもいたじゃないか…
カリオスさんがいるところであまり言いたくはないが仕方ない。
私はイダジンの目の前にしゃがみ込んだ。
そして、顔を少しだけ近づける。
「…前の勤務先でやらかしたから転勤させられたただのシスターだけど、な・に・か?」
苛立ち百パーセントの声でイダジンに言ってやった。
私の返答にイダジンがぽかんと口を開けている。
…恥ずかしいこと言わせんなこのハゲ!
そう心中で叫んで、立ち上がる。
「連れて行け」
カリオスさんがそう言うと、イダジンを取り押さえていた魔術士の二人が分かりましたと答えて、すぐさまイダジンごと目の前からいなくなった。
突然、この洞窟に現れたときのように、移動魔法を使ったのだ。
「さあ、あなたも一緒に外へと出ましょう」
カリオスさんがそう言って、私に手を差し出した。
私は少し照れながらも、その手をギュッと掴む。
すると、一気に周りの景色が変化する。
いや、景色が変化したのではなく、私とカリオスさんがカリオスさんの移動魔法で、洞窟の外へと一瞬で移動したのだ。
姫様も別の魔術士によって、私とカリオスさんのすぐ側に瞬間移動してきた。
外はまだ薄暗く、もうすぐ日の出の時間になる頃だ。
久しぶりの外の空気に少し安堵するも、随分と道草を食わされたことにどっと疲れを感じた。




