誤算だったわね
イダジンが高らかに魔法の名前を叫んだ。
その声が洞窟内に響き渡る。
しかし、それだけであって何も起きなかった。
イダジンが自分の両手を見つめながら、驚きの表情を浮かべる。
それを見て、狐につままれるとはまさにこんな表情なんだろうなと思った。
「馬鹿な…何故、魔法が唱えられない…?」
イダジンが苦悩する。
「…アンタの方が随分と誤算だったわねイダジン」
イダジンがまだ理解していないようだから、私はそろそろ種明かしをすることにした。
「はぁ?」
私の台詞にイダジンが不可解な面持ちで私を見た。
「アンタの魔法はとっくに封じさせてもらっていたんだよ。そんなことにも気づかないでよく自分を高等な魔術士と呼んだな?思わず笑い出しそうになったわ」
「…私の魔法を封じただと?デタラメを言うな!いつそんな暇があった!」
イダジンが叫び声を上げた。
「ホーリーインパクトだよ」
私の言葉にイダジンがアッといった表情になる。
「そうだよイダジン。あの時、ホーリーインパクトの白い光に目が眩しくてアンタも目を瞑らざる得なかった筈だ。だから、その瞬間を利用してあらかじめアンタに魔法を封印する魔法をかけておいたんだよ」
そう言って、私は口角を上げた。
「…まさか、全て見抜いていたというのか…本当に何から何まで…」
イダジンがあり得ないと言うばかりに両手で頭を抱えながら、地面に膝をついた。
「終わりだイダジン」
イダジンにそう言い放つ。
「…くそぅ…もう少しだったのに…くそぅ!!」
イダジンがそう叫びながら、私の横を素早く通り過ぎて、姫様の方へと向かって走った。
「イダジンもうやめて…!」
それに気づいた姫様が声を上げる。
しかし、イダジンの最期の悪あがきを私が手を伸ばして腕を掴み止めた。
そして、姫様とは反対方向へと放り投げる。
その勢いでイダジンが地面の上を激しく転がった。
「このまま、私がアンタをボコボコにしたいところだけど、どうやらそれは叶わないみたい。ようやく御出でなさったようだから」
「…ふぇ?」
イダジンが地面に倒れた状態で私の言葉に変な声を出した。
その瞬間、洞窟内にたくさんの何かが現れる。
それに気づいた姫様が安堵の表情を浮かべた。
そう…現れたのは姫様もよく知る者たち…インナリィ王国の魔術士たちだ。




