誤算だったな
「イダジン…?」
本性を現したように突如笑い声を上げるイダジンに姫様が驚きと戸惑いが入り混じった表情を見せる。
「…たしかに王国がきちんと調べれば誰が漆黒の魔女の封印を解いたかくらいは分かるだろうな。ただし、それはクラリス様が無事に生きて城に戻れればの話だがな。漆黒の魔女によって、この洞窟でお亡くなりになられたとなればそれも不可能だ」
イダジンの化けの皮がついに剥がれる。
「…それがアンタの筋書きか?」
すっかり、本性と顔が一致したイダジンを見下ろす。
「いや、私も流石に漆黒の魔女が倒されるとは思わなかった。だが、それは嬉しい誤算だったよ。だってそうだろ?漆黒の魔女を利用してクラリス様を亡き者にしたところで、漆黒の魔女の存在が邪魔になる。その悩みをいともあっさりと解決してくれたのだから、本当に感謝しているぞシスター」
イダジンが高笑いが洞窟内に響き渡る。
「イダジンあなたは…」
クラリス姫の目から涙が溢れる。
「…で、今からアンタが自らの手で私と姫様を殺すと?漆黒の魔女に勝った私を?」
姫様を泣かせたムカつくイダジンに怒りを込めて訊いた。
「シスターよ…たしかにお前は強い。あの漆黒の魔女を倒すくらいの実力者なのだから…しかし、あの漆黒の魔女を倒すのに体力や魔力を消費していない筈がない…」
イダジンが不気味に微笑む。
「…何が言いたい?」
イダジンの言葉に首を傾げる。
「そのままの意味だ。今の漆黒の魔女に力を使ってしまったお前なら私でも倒せると言うことだよシスター」
イダジンがクックックと笑い出す。
「何故、私が盗賊や漆黒の魔女の力を借りてクラリス様を殺そうとしたと思う?ただ立場上、自ら手を下すのはあまりにもリスクが高かっただけなのだよ。あんな盗賊たち共くらい私が力を出せば、いとも簡単に消せる。漆黒の魔女はそうはいかないにせよ、いざとなれば封印くらいは出来る自信はあったさ。インナリィ王国の大臣であるイダジン様を舐めて貰っては困る」
勝手にペラペラと喋るイダジンの言葉を黙って聞いていた。
「誤算だったなシスター」
イダジンがそう言って、私に両手を向けた。
「何が…?」
顔色を変えずに訊いた。
「私が強かったということだよ。さて、漆黒の魔女の仕業に見せかけるならやはり闇魔法がいいな」
イダジンがなんともムカつく表情を見せた。
「闇魔法…?」
「ああ、闇魔法だ。まあ、驚くのも無理はない。闇魔法は通常なら魔族しか使えないのだからな。しかし、私のような高等な魔術士ならそれが可能なのだよ」
イダジンが聞いていないことまで丁寧に説明してくれる。
そして、イダジンがぶつぶつと何かを唱え始めた。
「さあ、二人仲良くあの世に行くがいい!シャドゥバースト!!」




