魔女の封印
「クラリス様…私のことではなく、こんな女の戯言を信じるとは見損ないましたぞ。このイダジン、ずっとクラリス様にお仕えしてきたというのにこの仕打ちはあんまりです」
イダジンがこの後に及んで、まだ姫様に情で訴えることをしやがる。
早く本性を出させないと、姫様が戸惑ってしまう…
「良い加減にしろ。これ以上、姫様を惑わすな」
イダジンの猿芝居を見下ろしながら、叱咤する。
「アンタはまず盗賊を雇って、クラリス様を亡き者にしようと企んだ。しかし、いざ盗賊たちが現れるとクラリス様を人質に王国から身代金をふんだくろうとしていてアンタは相当ショックを受けて焦った。自分が大金を積んだのにかかわらず、盗賊たちはまだ金に目を眩ませてしまったのは随分と誤算だった筈だ」
私の言葉にイダジンの悲しげだった表情が薄れていく。
「でも、狡猾なアンタは盗賊作戦が失敗した時のためにもう一つの作戦を用意していた…」
私の言葉にイダジンが目を逸らす。
「…漆黒の魔女」
姫様が囁くようにそう口にした。
「ええ、そうです。イダジンが漆黒の魔女の封印を解いたのです。先程、姫様が封印された漆黒の魔女は王国によって厳重に管理されてきたと仰っていました。それなら、もし封印を解けるとしたら、それは王国の者しかまずあり得ません。おそらくイダジンは予め封印を解く手筈をしていた。完全に解いてしまえば、盗賊たちで事足りた時に無駄に漆黒の魔女の封印を解いてしまうことになる。いずれ王国を手に入れたいイダジンにとって、それはかなりリスキーな筈ですから…」
と長々と姫様に説明する。
そして、今度はイダジンに向けて話し出す。
「アンタは封印された漆黒の魔女と契約した。封印を解く代わりに姫様の命を奪って欲しいと…更に自分の命の保証も。だから、漆黒の魔女が現れても、アンタは漆黒の魔女に何もされなかった訳。違う?」
私の問い掛けにイダジンは私を睨みつけるだけで何も言葉を発さなかった。
「さしずめアンタは部下に漆黒の魔女の封印を解く準備をさせておいて、アンタが魔法によって部下に合図を送ると封印を解くように指示していた。だから漆黒の魔女がここに現れた時、開口一番に待ちくたびれたと言ったのよ」
「…フン、全ては憶測だ。証拠はない」
まだイダジンは認めようとはしない。
「これ以上、しらばくれてもいずれ王国に戻った時、クラリス様か王様の命によって誰が漆黒の魔女の封印を解いたかをきちんと調べれば足はつく。そんなことは王国をよく知っているアンタが一番分かっている筈じゃない?」
私がそう言い放つと、イダジンが突然笑い声を上げた。




